はじめての福島・大日岩(岩場解説あり)
クライミング日:2025年11月2日(土), 3日(日)
今回のクライミング
11月の第1週、文化の日の三連休。
去年もこの三連休に、福島遠征を計画していたのだが、天気の関係で小川山に変更。1年越しのツアーだ。
白河不動岩2日(土・月)、大日岩1日(日)の予定だったんだけど、金曜の午後から深夜にかけて大雨の予報。
土曜の不動岩は厳しそうだが、大日岩は雨後の乾きが早いという情報があったので、少し計画を変更。Airbnbで予約していた宿が、福島の田村市という、どちらかというと大日岩に近い場所だったので、土・日の2日間が大日岩、月曜に不動岩へ行くことに。
岩場解説
概要

川沿いにある、大きな花崗岩の一枚岩。秩父・長瀞のように、壁の前には岩畳が広がっていて、居心地・ロケーションともに抜群。
東北地方の岩場の中では東京から近く、アクセスにも優れている。
車でのアクセスと駐車場
Googleマップ通りに行けばOK。最後の100mくらいだけ未舗装だが、ほぼフラットなので、最低地上高の低い車でも問題なし。
東京北西部にある僕の自宅からだと、休憩を除いて3時間半弱。白河不動岩より、45分くらい長くかかる。
福島松川スマートICで下りると、そこからは10分くらいなので、高速代はかかってしまうが、アイサイトがあれば運転は楽。コンビニも近くにある。

駐車スペースは、譲り合えば6台くらいは止められそう。今回は3連休の土日だったが、2日間とも貸し切りだったので、あまり満車の心配はなさそうだ。
アプローチ

駐車スペースの奥から、右下に続く明瞭な踏み跡を降りていく。ちょっと急登(帰りが登り)だが、特に迷う心配はなく、徒歩5~10分くらいのアプローチ。御前岩と同じか、さらにもうちょっと楽かも。
雨の後はややぬかるむので、転ばないように注意。


宿泊
岩場から近くて比較的大きな街は、福島市内だろうか。
今回は白河不動岩へも行く予定だったこともあり、ゆきりんがAirbnbで予約してくれた、田村市にある万屋今年田という宿に2泊した。大日岩から40分ほど。

田村市内にはスーパーなどもあり、特に不自由なし。今回は自炊だったので、飲食店については不明。
ちなみに、宿の近くにあった聖石温泉は、いかにも温泉といった茶褐色のお湯。かなり年期が入っているけどオススメ。
シーズン
基本的には冬の岩場と考えた方がいいだろう。南向きなので、一日中陽が当たる。さらに、壁による反射のためか、気温以上に暑く感じた。城ヶ崎のシーサイドみたいな感じなのかな。
今回行ったのは11月の頭で、小川山・瑞牆ではダウンを着ていても寒い時期。しかし、大日岩は半袖でビレイしていても暑かった。
日陰もほとんどないので、日傘があってもいいと思う。
ルート

とても見栄えの良い大きな岩で、垂直よりやや被っている。全体的に逆層気味で、フェイス面にはあまりホールドがなく、クラック沿いに引かれたルートが多い。
岩を左右に二分するように走るワイドクラック「不動明王(5.11c)」が有名。
ルートが引ける部分が限られている上に、地方の岩場にありがちだが、やたら派生ルートが多くてスパゲティ状態。それなりに登られてそうなルートに関しては、極端に古いボルトは少ないが、カットアンカーなども残っている。
100岩ではスポートルート扱いになっていても、かなりランナウトしているルートもあるので、カムがあるといいと思う。
慣れの問題もあるのかもしれないが、グレードは辛く感じた。
トポ
トポに関しては、100岩で一通りルートは網羅されているようだが、上で書いている通り、スパゲティ状態でどれがどれか良くわからない。
ROCK TOPOは写真の上に矢印が表示されるので分かりやすい。
岩質
花崗岩ということで、瑞牆や小川山と似ているが、指皮には割とマイルドに感じた。上で書いている通り、岩が逆層気味で下引きできるホールドが少ないので、そのおかげ?かもしれないが。
長く登られている岩場ということもあり、岩は安定している印象。しかし、明らかに上から落ちてきたと思われる大岩も転がっているので、一応休憩場所は注意した方が良いかもしれない。
あとせっかくカッコイイ岩なのに、ルートじゃなさそうなところにも古いリングボルトやハーケンが残っていて、この点は個人的にはちょっと残念。
Day1(Saturday)
朝6:30、新白岡駅でハナダテ姉妹をピックアップ。行動食の買い出ししつつ、9:30頃に駐車スペースへ到着。
前日の金曜、都内は夕方から深夜にかけて大雨。大日岩も同じような天気だったようだ。岩場へのアプローチは、地面の土がぬかるんでいて少し大変だった。
川が近づいてくると、何やら轟音が。

森を抜けて視界が開けると、目の前には濁流の川が広がっていた。僕は初めての大日岩だったが、ハナダテ姉妹はボルダーで以前来たことがあるそうで、今回が2回目。前回は川幅がこの3分の1くらいだったらしく、あまりの違いに驚いている。

ハギビスは高さのあるボルダーだそうだが、半分以上が水の中。
肝心の大日岩は、部分的に濡れている部分があったが、概ね乾いていて問題なかった。

しかし、アップで登ろうと思っていた日陰エリアは川の水面が近く、ロープを濡らしそうだったので、翌日水が引くのを期待することに。
❌R114(5.12a), 3go
大日岩のスポートルートの中では、よくトライされている人気の一本のようだ。

地面に落ちている、大きな岩に立ってスタート。出だしは見た目よりも難しく、結構緊張する。
クラックが走る凹角で、一旦ノーハンドに近いレスト。ここから左にトラバースする部分が核心。
フットホールドがほとんどなく、スメア足でのアンダーの処理。一番難しいムーヴは、左手で左カンテ付近にあるアンダーを持ち、左足スメア、右足トゥフックで右手を四角いピンチに寄せる一手。
その後も悪い足でアンダー・サイドホールドが連続し、どうバランスを取るかがポイント。
この日は3便出したものの、バラシでようやく1回だけ核心の一手が止まっただけで、RPには程遠い状態。
Day2(Sunday)
この日からかいてぃーも合流。

昨日よりかなり川の水量が減り、石畳が見えている。これでも、普段よりはまだ川幅が広そうではあるが。

ハギビスも全体が現われていた。
✅シャン2(5.11a), 2go

大日岩は、川に面した南面がメインだが、東面にもルートが引かれている。ここは100岩だと、日陰エリアと書かれているが、午前中は陽が当たる。
シャン2(5.11a)は、日陰エリアの一番左に引かれたルート。下部3分の2ほどはシャンデリア(5.10c)で、そのロングバージョンがシャン2。
まずこのシャンデリアだが、見た目が5.10台とは思えないほどスッキリしていて、非常にカッコイイ。
出だしはビレイポイントから少し上がり、手を伸ばして遠いホールドを掴み、乗り移るようにしてスタート。落ちるとケガできる高さなので、1P目にクリップするまでが怖い。
下部で左トラバースし、カンテに出る部分が核心。手はそれほど悪くないが、5.10台のフェイスとしては、足がかなり悪い。アップのつもりで取り付いたものの、ここでライン取りを誤ってテンション。
その後のカンテは割とガバで、フェイス面も思ったより掛かりの良いカチが続いているが、オンサイトだとフットホールドの選択が難しい。もう1回テンションを挟み、なんとかシャンデリアの終了点へ。
シャンデリア終了点は小さなテラスになっていて、ノーハンドレストのあと、シャン2はここから再び右にトラバースしてリスタート。ややスローピーなカンテを使って登っていく。手順がポイントで、オンサイト難易度は高めだと思う。ここでも3回テンション。
5.10cで2テン、さらに5.11aパートで3テンの計5テン。アップのつもりが、しっかりワーキングになってしまった。笑
2回目で登れた時は、ほとんどパンプしなかったが、ムーヴがしっかり作れないと登れないルートだと思う。グレードは辛めに感じたけど、小川山のレギュラー(5.10c)とかも結構難しいし、花崗岩ってこんなもの?
それはさておき、掛かりの良いカチホールド、細かいフットワーク、そしてバランシーなカンテ。花崗岩らしい好ルート。
✅R114, 3go(計2d6go)
昨日に続いてR114。やはり核心ムーヴができない。

ハナダテ姉妹は、上の写真のムーヴで2人とも完登。僕の場合、足の長さの問題か、あるいは単純に体幹が弱いせいかはわからないが、このトゥフックが効かず、右手を離すことができない。

もっと遠くにトゥフックを掛けてみる。ここは掛かりは良いのだが、位置が高過ぎて、やはり右手を離すとフックが抜けてしまう。
せっかくの遠征で、はじめての岩場。もっと色々なルートを触りたい!
そろそろ諦めようかと思っていたところ、同じくトゥフックでは出来なかったかいてぃーが、ダブルガストンムーヴでこの核心を解決。

トゥフックムーヴでは右手で使う四角いピンチに左手、凹角にニーバーを効かせ、右手で悪いガストンを持って右足を解除し、振られに耐える。
手の保持の強度は上がるが、僕も試してみたところ、なんとかできた。
この日の3便目(計6便目)。核心を突破できる確率は五分五分だと思っていたが、なんとか振られに耐えた!
その後もしばらく落ちられるが、ムーヴを固めていたので問題なかった。
ノーハンドレスト直後に、フレッシュな状態で核心に入れるものの、標準的なトゥフックムーヴ、かいてぃーが見つけたダブルガストンムーヴ、いずれも難しい。持久要素はそれほど高くないが、核心を抜けても落ちられる難易度。5.12aだと辛めで、5.12bくらいに感じた。
あまり長さはないが、ムーヴ作りが楽しく、人気なのも頷けるルート。
❌不可能クラック(5.12a/b), 2go

不可能クラックという名前だがボルトルート。終了点を除き2クリップのみの、ザ・短しい系。
ちなみに、上部はヴォラピュク(5.13b/c)へと続く。
両手カチから、高い位置のヒールフックで体を上げ、クラック沿いのホールドを取るムーヴが核心だと思われるが、強度が高くてまったく体が上がらない。
不可能クラックというより、僕にとっては不可能ハイヒールだった。
エイドで抜けて上部もやってみたが、こちらはすぐに出来た。ただでさえ短いが、その中でも核心の1,2手が大きなウェートを占めるルート。
グレーディンが難しいことはわかるが、それでも5.12a/bは辛いと思う。
ふりかえり
はじめての大日岩。2日間のうちの多くをR114に費やしてしまったが、なんとか登れてよかった。かいてぃーに感謝。
慣れの問題もあると思うが、トライしたルートはどれも難しかった。僕は触っていないが、仲間がトライしていた星人(5.10c)やカメリア(5.11a/b)も、かなり悪そうだった。
東北地方の岩場は、三崎海岸や山寺などもグレードが辛いと聞くが、みちのくグレードというやつだろうか。
かなりカッコイイ壁ではあるのだが、クラック以外にはホールドがあまりなく、フェイス面をまともに登るルートはわずかで、さらにいずれも高グレード。僕がツアーで登るには厳しそうだ。
不道明王(5.11c)は、そんな壁の真ん中を走る、かっこいいワイドクラック。今のところワイドは5.10aも登れないが、もしトライできるワイド技術が身に付く日が来たら、ぜひやってみたい。
