【小川山】初のトラッド&クラック!小川山レイバック

クライミング日:2025年5月24日(土)
今回のクライミング
白馬大雪渓バックカントリーで、板納めの予定だったこの週末。
しかし、北アルプスはあいにくの天気予報。大量降雪に恵まれた今シーズンは、強制終了となった。
太平洋側はもう少しマシな予報だったので、計画を変更してクライミングに出掛けることに。
話は変わるが、蒸し暑くて不快な日本の夏の間、ある程度涼しく登れる場所というのは非常に限られている。
クライミングを始めた年は、ヒルにも負けず、真夏の有笠山に毎週通った。日陰で風が出ればそれなりに涼しかったけど、標高約1,500mで登れる瑞牆・小川山を一度知ってしまうと、やはり快適とは言い難い。
という訳で、夏は自然とその2つのメジャー花崗岩エリアに足が向く。最初は無数にあるかに思えたルートだが、さすがに毎週のように通っていると、手頃なグレードはどんどん減っていく。
一方、フリクションに左右されやすい岩質なので、7月や8月に5.13台を打ち込むというのも大変だ。
前々から気づいてはいたのだが、そろそろクライミングの幅を広げる必要がある。
恥ずかしながら、これまでマルチの経験がなく、遊ぶことができるのはシングルピッチに限られていた。トポで良さそうなルートを見つけても、複数ピッチの内の2ピッチ目以上だと、諦めざるを得なかった訳だ。
そんな中、この冬BCスキーで一緒に遊んでくれたゆきりんが、マルチのやり方を教えてくれるという。さらに、「マルチのルートってトラッド(クラック)が出てくることが多いから、一緒にトラッドも始めてみたら?」というお言葉が。
前置きが長くなったが、今回は初のトラッド&クラック体験。

✅小川山レイバック(5.9), 3go
僕の記念すべき初クラックルートにゆきりんが選んでくれたのが、小川山レイバック。
駐車場から徒歩約10分とアプローチに優れた、親指岩というエリアにある。
親指岩には、本気(マジ)のラインという5.12aのスポートルートをトライしに来たことがある。
その時、すぐ隣にあった白く美しいクラックは、トラッド経験皆無の僕の目にも、しっかり焼き付いていた。
そのクラックを自分が登る日が来るとは、全く想像もしていなかった。
ゆきりんから与えられた目標は、ワンデイRP。
ルート解説

クラックをやったことがなくても、「小川山レイバック」という名前は聞いたことがある、という人も多いのではないだろうか。
5.9というグレードながら、小川山本では堂々の四つ星がつけられている。
まずは見た目が抜群で、ただただ美しい。特別な存在感を放っている。
クライミングの内容については、クラック自体が初めてで他のクラックとの比較などはできないが、素人なりの解説を。
このクラックは、ほぼ直角の位置関係にある2つのフェイスの間にできている。
両面ともフェイス上はホールドが乏しく、基本的には手も足もジャミングが最も合理的なムーヴだ。
クラックの幅は出だしが狭く、ここが最初の核心。後半は幅が広がり、ジャムがしやすく(手のサイズにもよる)なるが、ややオーバーハングしている。そこからのマントル返しが第二核心だろうか。
中間部にガバ棚があり、ここで一旦完全レストとなる。この棚がなければさらに良いルートなのかもしれないが、クラック童貞の僕には憩いの場所だった。
ルート上部はルーフ状になっており、雨でも登れるらしい。
ちなみに、今回は時間の関係でやらなかったが、小川山レイバックには2ピッチ目があり、岩頭の上まで抜けることができるそうだ。
トライ
まずはテーピングの方法を教わる。ちなみに、テーピングの代わりにグローブを使う人もいるらしい。

ゆきりんが持っていた、ニトリートというテープを使わせてもらった。この日ずっと剥がれることもなかったし、帰り際に剥がした後も特にベタつかず。
夕方に寄ったROOF ROCKで早速購入した。

次はプロテクションのためのカム。
実は以前から、カムは1セット持っていた。花崗岩の場合、スポートルートでも補助的にカムを使う場合がある(僕の記念すべき初カム使用については以下の記事参照)。

基本的に外岩でもトップロープはやらないのだが、ジャムとカムの両方がほぼ初めてなので、まずはプロテクションはさておき登りから。
今日の目標は、RPよりもジャムで登ることだ。すなわち、レイバックは逃げを意味する。
1便目(トップロープ)
トップロープでの1便目。出だしはクラックが細く、手が大きい僕にとっては特にジャムが決まりづらいが、それでも効いている感覚はある。
問題は足だ。シューズの先のわずかな部分しかクラックに入らず、とても立ち上がれる気がしない。仕方なく、最初はフェイスの粒足を拾っていく。
徐々にクラックは広がり、手のジャムは快適に。足もクラックに収まってはいるのだが、こちらはまだしっくり来なくて、トップロープにも関わらずめちゃくちゃ怖い。
ようやく中間部のガバ棚。かなり登ったつもりだったが、下を見ると地面までの距離は驚くほど近い。ここまですでに5テンくらい。
上部は少し慣れてきたこともあり、やや楽に登れるように。しかし、最後のマントルがこれまた怖い。奥にこれといったホールドないのだ。
一方、クラックはさらに先まで続いている。ゆきりんのアドバイス通り、最後は芋掘り体勢でアンダージャミングしたらいい感じに。
結局上部でもさらに5テンほど入り、合計約10テン。僕は思った。

これ、ワンデイRPどころか、今日中のリードトライなんて危な過ぎて絶対ムリ。
2便目(疑似リード)
今度はプロテクションの練習を加え、トップロープ状態で登りつつ、カムだけ挿していく。
テンテンだった1便目から比べると、登りは驚くほどスムーズ。相変わらず下部のフットジャムはほぼ出来ないが。
どこに何番のカムを入れるかを確認していく。今はトップロープだが、リードではこのカムに命を預けると考えると、自然と緊張する。
そうこうしつつも、気づけばノーテンで終了点へ。たった1便でこれほど変わるものだろうか?10テンの前の便より、パンプも圧倒的に少ない。

3便目(リード)
カムへの信頼度はさておき、先ほどのトライで多分落ちないという自信がついた。勇気を持ってRPトライ。
しかし、やはり下部は怖く、「RPよりもジャム」の言葉はどこへやら。掟破りのレイバックを発動して突破。
中間部からは余裕が出てきたので、なるべくジャムで。
リードトライでは、「落ちたらカムは本当に自分を止めてくれるのだろうか?」と不安になる想定をしていたが、登りたい気持ちが勝っていて、下部を除けば不思議とあまり怖くはなかった。
得意の上部は、かなり省エネで登ることができるようになっていて、一手一手レストしているような感覚だった。
最後のマントルをしっかりと芋掘りアンダージャムで返し、終了点にクリップ。
「出来た~!」。1便目のトップロープで10テンからは考えられないが、まさかのRP。しかもほとんどパンプもせず。
登ったのが5.9とは思えない充実感で、クライミングを始めた頃の気持ちを思い出し、幸せな気持ちだった。
体感グレード
フェイスの5.9というと、今ではアップにもならないグレードだ。しかし、その感覚がスラブやクラックでは通用しないというのは、ご存知の方も多いだろう。
1便目は正直5.12台くらいに感じた(実際10テンくらいしてるし)が、2便目で5.11台、RPした3便目で辛うじて5.10台後半といったところ。
カムのセットなど、スポートにはない要素も入るし、グレードに関してはやはりクラックはクラックといったところだろうか。
一方、ジャムがしっかり決まれば、普通にガバ持つより楽な感じもした。今後クラックが上達すれば、小川山レイバックがちゃんと5.9に感じる日も来るのかもしれない。
ふりかえり
僕がいつもジムリードで登っているベースキャンプ入間には、入間クラック(5.11a)というルートがある。
ウォールとウォールの隙間がクラックになっていて、僕も一度だけトライしたことがあるのだが、1mも進めずに敗退。
その時は、ハンドジャムもフットジャムもとにかく痛いだけで全く楽しくなかったんだけど、今回の小川山レイバックは怖いながらも楽しめた。スポートルートでもそうだが、僕にはやはり外岩が合っているようだ。
現時点で、クラックの高グレードを目指すつもりはないのだが、他のクラックルートもぜひ触ってみたい。フェイスでもジャムの技術が役に立つ場面てあるしね。
夕方から雨になりそうだったので、早めの15時頃撤収。Roof Rockでジェラート、ヤツレンでヨーグルトソフト、そしてアフガンで牛すじ煮込みカレーと食べまくり。
