海外ツアー

2024GWスペインクライミングツアー:ロデジャー編

きい

この記事は、2024年GWに行った、スペインクライミングツアーについて書いたものです(全4回のシリーズ)。

岩場の概要

ロデジャーは美しい渓谷に広がる石灰岩の岩場。

クライミングだけではなく、ハイキングやヴィアフェラータ(「鉄の道」という意味で、ワイヤーロープやはしごが設置されたコースを登る)、キャニオニングを楽しんでいる人も多数。

日本だと登ったら怒られそうな景勝地でクライミングをしている気分。

被っているロングルートが多く、日本の標準的なルートと比べて核心は易しい代わりに、持久力が要求される。コルネが発達していて立体的な形状をしているので、ニーバーなどでのレスト力も重要。

今回は初めての海外クライミングということで、グレードやRPにはあまりこだわらず、できるだけ色々なルートを触ってみた。

「Rodellar」の読み方

この発音がなんとも難しい。スペイン語では、「L」はやや「J」に近い発音になるようだ。そのため、カタカナでは「ロデジャー」と書かれることが多い気がする。「ロデリャー」「ロデリャール」という表記も目にするけど、このブログではロデジャーで統一してます。

車でのアクセス

ロデジャー(Rodellar)はスペイン・アラゴン州にある、小さな村?の名前らしい。

バルセロナ空港からロデジャーまでは車で3時間ほど。最後の30分くらいは、センターラインのない細い山道となる。

日本と違ってカーブミラーがないのに、現地の人はビタビタのキープライトで、すれ違う時も全く速度を落とさない。運転は慎重に。

宿泊

今回はロデジャーの集落内にある、Valle de Rodellarという、アパートメントタイプの宿に3人で泊まった。

外観はこんな感じ、すぐ後ろに各クライミングエリアがある渓谷が見えている
中は広々、調理などに必要なものも一通り揃っている
清潔なトレイ、シャワー、洗面台
こんな感じのベッドルームが2つ

歩いて岩場まで行ける。

料金はシーズンにもよるみたいだけど、我々が泊まった期間は、一人当たり一泊¥5,000くらいだった。

文句なし。次回ロデジャーに行く時も、ここに泊まると思う。週末などは満室の日もあったので、早めの予約がオススメ。

岩場へのアプローチ

ロデジャーの集落は非常にコンパクト。どれくらい小さいかというと、ドラクエに出てくる大きめの街くらいだと思ってもらえればいい。

集落の端にあるValle de Rodellarから、集落の反対側の端にあるトレイルの入口まで、徒歩約10分。そこから渓谷内の各エリアまではさらに5~20分程度

主要なエリアはコンパクトにまとまっているので、1日に2~3エリアを移動しながら遊べる。時間帯によって日陰になるエリアが変わるので、涼しい場所を追いかけながら登るのが賢いと思う。

多少アップダウンもあり、激近という訳ではないが、とにかく景色が良くてアプローチですら楽しい

トレッキング目的の観光客もいるため、トレイルは非常に整備されていて歩きやすい。

渡渉が必要になるエリアもあるが、今回のツアーではほぼ靴を脱がなくてもいけた。水量が多いと難しい場合もあるかもしれない。

シーズンと気候

GWの時期にあたる4~5月は、クライミングをするにはちょうど良い気温。

僕は寒がりなので、日陰での休憩やビレイ中は薄手のダウンを着ていたが、ユッキーさんとキクさんはフリースで過ごしていた。

今回は移動日も含めると、7泊8日のロデジャーでの滞在だったが、内3日は雨が降った。ただし、1日中降り続くような日は幸いなく、主に短時間の通り雨といった感じ。

オーバーハングしたエリアが多いので、雨が降っていても割と登れる。今回は我々が到着する直前まで、晴れた日が続いていたらしく、染み出しもほとんどなかった。

しかし、年によっては同時期に、かなり染み出しに悩まされたという話もある。このあたりは運次第。

最も天候が安定するのはらしいので、シルバーウィークは狙い目かもしれない。

買い出し

ロデジャーは小さな村だが、売店が2つあり、最低限の食料品・日用品は買うことができる。

キャンプ場の近くにある売店
宿泊したValle de Rodellarには売店に加え、レストランも併設されている
ここのパエリアは絶品だ

また、集落内にはスポルティバショップがあるが、我々の滞在期間中はずっと閉まっていた。宿の人の話によると、5月末?からオープンとのこと。

Rodellarにあるスポルティバショップ

ロデジャーから比較的アクセスが良い大きな街としてはウェスカ(Huesca)。ロデジャーからは車で1時間くらい。食べ物などはレスト日にまとめて買ってくると良いかもしれない。

僕は事前の情報から、寒さより暑さの心配をしていたが、持って行ったフリースでは防寒不足だった(ちなみに現地の人も、日陰ではダウン姿が珍しくない)。ウェスカのデカトロンというスポーツ店で、60€の薄手のダウンを購入。

スペイン各地にあるメルカドーナ(Mercadona)というスーパー
日本でいうところのスポーツデポ的な量販店

バルセロナからロデジャーに向かう途中に買い出しする場合は、ジェイダ(Lleida)という街が通り道になるので便利。

トポとルート選び

トポはネットでダウンロード(PDF)可能。エリアによっては、あまり電波が良くない場所もあるので、事前にダウンロードしておきたい。写真に引かれた各ルートの線はかなり正確なので、お目当てのルートを見つけやすい(有名ルートなどは取り付きにルート名が書かれている場合もある)。

ただし、このネットトポには☆やルート解説がないため、ルート選びには使いにくい。

キクさんは8a.nuというアプリでアッセンド数が多い順にソートし、よくトライされているルートを選んでいた。

その他、TKDのブログはルート選びの際にも、大いに参考にさせてもらった。

エリア・ルート紹介

今回行ったエリアと、トライしたルートについて記載。

El Camino

エルカミノはトレイルの入口から高度差が小さく、アプローチに優れたエリア。

20mくらいまでの比較的短いルートが多く、傾斜も薄被りといった感じで、コルネもあまり発達していない。グレード帯としては初・中級者向けのエリア。

午前中は陽が当たらないため、ここでアップしてから他のエリアに向かうクライマーも多い。ビレイポイントや各ルートの取り付きが、他のエリアへのアプローチ道になっていて、常に多くの人が行き来している。

Q
✅Para Mis Amigos(6a+), FL

今回のツアーで最初にトライしたルート。ガバ続きでアップに最適。

Q
❌Jauria De Perros(7b+), 未完登, 1go

↓のToma Castanazo(7a+)の隣にあり、間違って取り付いてしまったルート。ロデジャーのよく登られているルートはボルダー要素があまりなく、持久系だと聞いてたのに、まさかのトップアウトできなくてビックリした(笑)。ロデジャーの不人気ルートを体験したい人にはオススメw。

Q
✅Toma Castanazo(7a+), FL

これですよ、これ!素直な持久ルート。オンサイトやフラッシュグレードの更新に。

Q
✅Orgamica(7a+), FL

Toma Castanazoよりややボルダリー。核心のホールディングにクセがあり、オンサイトは難し目かもしれない。

Aquest Any Si

美しい川が真横に流れる気持ちの良いエリア。朝一の時間を除いて陽が当たらず、涼しくて快適。

Q
✅Tragaldabas L1(7a+), FL

割と面白かった気がするんだけど、内容が思い出せない…。

Q
✅Aquest Any Si(7b+), RP, 2d4go

Rodellarのルートの中では特別長くはない(とはいえしっかり20mくらいはある)が、ハードな核心がない代わりに極端なガバもないストレニ系。

上部は終了点に向かって傾斜が増していくためドパンプ必至。アンダーホールドが多いためスタンスが重要。持久力だけではなくムーヴも要求される好ルート。

Pince Sans Rire

僕がロデジャーに行く前に持っていたイメージ。

  • どっ被りの強傾斜
  • ロングルート
  • 発達したコルネ
  • 核心らしい核心はなく持久系
  • ランナウト

このエリアはまさにこんな感じ。それでいて、比較的手ごろなグレードが揃っている。

特にエリア名と同じ名前を持つ「Pince Sans Rire」は、↑のイメージをそのまま形にしたようなルート。超オススメ

Q
✅Pince Sans Rire(7b+), RP, 2d3go

巨大な壁が広がる「Pince Sans Rire」エリアの中で一際目立つ、長く美しく伸びる一本の黒いコルネ。「pince」とは「ピンチ」の意味らしい。その名の通り、ひたすらコルネピンチ。

特に難しい部分はないが、素直に上から下向きに踏めるフットホールドが少なく、握力に頼ってコルネを握りしめると猛烈にパンプする。

自分の登っている動画を見ると、ハイステップでレイバック気味に登っているけど、ヒールフック、キョン、フットジャムなどでもっと楽に登れると思う。そして何よりニーバーでのレストがRPへの鍵。

「良いルート」に求められる要素の一つに「ムーヴの多様性」があると思うけど、このルートは明らかに例外。日本ではまず体験できないクライミングをぜひ。

Q
✅Maria Ponte El Arnes(7b+), RP, 1d2go

一見あまりホールドがなさそうな前傾壁。登ってみると実は最低限ながらも掛かりのよいホールドが散りばめられている。

ホールド間の距離が遠く、ダイナミックなムーヴが求められる(リーチがある人は登りやすく感じるかも)。レストとボルダリーなパートのめりはりが効いている。

上部はスローピーなコルネ登り。見た目以上に傾斜があり、ここでもニーバーレストが有効。

Q
✅Ciao Bambino(6b), FL

クラックのレイバックを中心に、大きな動きでガバをグイグイ登る。アップに良さそう。

Q
❌Malaguita(7b), 未完登, 1go

特に人気ルートという訳ではないんだけど、見た目のフィーリングでトライしてみた。とても大きくてスローピーなコルネを登っていく。

今回のツアーで唯一、両足でニーバーした。とにかく、あらゆるところでニーバーしまくり。

マスターオンサイトトライで、終了点目の前までいったけどフォール。その後、落ちた部分をバラシでやってみたけど、ライン取りもムーヴもよくわからない。

まぁ不人気ルートとはそういうことです。笑

Q
✅El Enano De Siberia(6b+), mOS

これはかなりオススメコルネ登りの練習に最適だと思う。

最後がランナウトしているにも関わらず、直前まで行っても終了点がなかなか見つからず不安になった。笑

Egocentrismo

アプローチが最も近いエリア。一日中、小雨が降ったり止んだりしていた日に、夕方から登りに行った。

ルートによっては、終了点付近だけ濡れている場合があったが、概ね問題なし。雨の日にオススメのエリア。

出だしが特に傾斜が強く、最初にボルダリーなムーヴが出てくるルートが多い。

すぐ隣にBoulder de Jonというエリアもあり、こちらも雨に強そう。

Q
✅De 8 A 14(7a), FL

最初と最後が難しく、中間部で大レストできる、という構成だった気がする。終了点付近だけ雨に濡れるので注意。

Q
✅Pequeno Pablo(7a+), FL

出だしのボルダーセクションがほぼ全て。後半もかなり被っていて、長さも結構あるんだけど、これでもかというくらいのガバしかない。笑

Q
❌De 9 A 3(7a+), 1go

確か「De 8 A 14」と似たような構成だった。こちらはあまり登られていないみたいだけど、持久要素があって面白かった。マスターでのオンサイトトライは、実質あと一手でフォール。。。

Surgencia

圧倒的な強傾斜&ロングルート上級者向けエリア。

アップダウンは少ないが、今回のツアーで行ったエリアの中では渓谷の一番奥にあるため、アプローチはやや時間がかかる。

No Limit(7c+)というルートを絶賛する声を聞いた。トポで探して、巨大な壁の中からそのラインを目で辿る。確かにカッコいいルートだ。次回ツアーの目標。

Q
❌Friki Diedro(7a), 1go

顕著なクラックを登るロングルート。マスターでのオンサイトトライだったけど、すごい高度感の中でのバランシーなムーヴで、とにかく怖くて、途中で心が折れてしまった。

アップのつもりで取り付いたのに、心身ともにヘトヘトに。笑

Q
✅Sayonara Baby(7c), RP, 2d4go

名前の親しみやすさもあってか、Rodellarを訪れる日本人クライマーには大人気だという「Sayonara Baby」。

どっ被りのボルダーからスタートし、一旦ノーハンドレスト。そこから長い長いガバ前傾壁を抜け、再びロングレスト。ここのレストは色々やり方があるけど、いずれにしても完全回復は難しいので、ガバセクションもできるだけ消耗を抑えたい。

そしてようやく核心部へ。コルネピンチから始まり、細かいハイアンダー、そして距離出しが必要なデッドムーヴ。ここだけでもかなり内容が濃く、探れば探るほど楽な方法が見つかるので、ムーヴ作りが楽しい。逆にバラしだと力業で解決できてしまうので、そうするとワンテン地獄が待っていそう。

80mロープでも終了点から下りるとあまり余ってなかったと思うので、70mロープの場合は要注意。高度感があり、色々なスキルが要求される好ルート。

Delfin

ロデジャーのシンボル的なアーチ。この写真の反対側から見るとイルカに見える。

そのアーチをまともに登るEl Delfinはもちろん人気ルート。アーチ両サイドのフェイスには、易しめのルートが引かれている。

すぐ隣のLas Ventanasというエリアには、高グレードが並んでいる。

Q
❌El Delfin(7c+), 2go

アイコンルートということもあり、当初から狙うつもりはなかったけど、せっかくなのでお触り。

下部はガバガバだけど、後半に現れる核心が難しい。ホールド自体はそれほど悪くないけど、ホールドの向きとスタンスが悪く、距離出しも必要。

ムーヴが難解で、すぐには解決できそうになかった。あまり経験のないドルーフクライミングに全く対応できなかった感じ。

下部もガバとはいえ、傾斜が傾斜なので、結局は繋げ核心になるのかもしれない。

このルートにこだわると、ロデジャーツアーというよりデルフィンツアーになりそうだったので、あっさりとギブアップ。短期ツアーでは時に諦めも肝心。

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ABOUT ME
きい
きい
登ったり滑ったりする人
1988年生まれ、愛媛県出身
東京の北西部に住み、週末は専らさらに北や西に出かける
仕事は電機メーカーのエンジニア
クライミング:2021年からリード&外岩を始めて本格的に
スキー:2017年からバックカントリーにハマる
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