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2024GWスペインクライミングツアー:シウラナ編 

takusuku

この記事は、2024年GWに行った、スペインクライミングツアーについて書いたものです(全4回のシリーズ)。

岩場の概要

幕状の岩肌が山あいに果てしなく広がっている。

石灰岩の岩場だが垂壁がメイン。岩質は有笠(特にパスファインダーがある辺り)に似ていてガビガビしている(もちろん指皮には厳しい…)。

ホールドは細かいカチやポケットがメインで、クライミングの内容は花崗岩的。瑞牆だと「真実の口」や「百獣の王」、小川山なら「レギュラー」などがイメージとしては近いと思う。

ロデジャーにも増してロングルートが多く、登り応えは抜群。どのルートも見た目は似たような感じだけど、実際にトライするとどれも個性があり、その質は素晴らしかった。

車でのアクセス

バルセロナからシウラナまでは車で1時間半ほど。

最後の10分ぐらいはワインディングロードだが、センターラインのないロデジャーまでのアクセスと違って片側一車線なので、比較的運転はしやすい。

駐車場は確か3つくらいあり、行きたいエリアに合わせて選ぶことができる。いずれも路肩に横一列に並べる感じで、二子山のようなイメージ。

台数のキャパもそれほど多くないので、週末などは満車に気をつけた方がいいかも。

宿泊

今回はReus(レウス)という街でAirbnbを使って宿泊。比較的大きな街なので、買い物などは便利。シウラナまでは車で45分くらい。

シウラナから車で10分くらいの距離に、Montsant(モンサン)という小さな街があり、結果からするとこちらでもよかった。

というのも、Reusはバルセロナ観光も考慮した位置だったんだけど、結果的に現地でのクライミングが楽し過ぎて、それどころではなかったからだ(笑)。

今回は行かなかったけど、Montsantからはマルガレフという岩場にも行きやすい。

岩場へのアプローチ

今回は第3駐車場?からアプローチするエリアのみだったけど、5分くらいで行けるエリアも多い。

ただし、トレイルは日本の岩場と同じように草木で覆われ、ロデジャーと違って景色では特別気分は上がらない。笑

シーズンと気候

日当たりが良いエリアが多く、もう少し気温が低い時期がメインの岩場のようだ。特に高グレードを狙って良いフリクションを求めるクライマーは、12~2月に訪れることも多いらしい。

とはいえ、バルセロナからのアクセスが良いためか、5月でも休日は多くのクライマーで賑わっていた。必然的に限られた日陰のエリアに集中するため、人気ルートでは順番待ちも。

トポとルート選び

今回はユッキーさんが持っていた、Tarragona Climbsという紙のトポを使わせてもらった。

各エリアの写真に、各ルートを示す点線が正確に書かれていて、お目当てのルートが決まっていればそれを見つけるのに苦労はない。ただし、☆やルート解説がないため、肝心のお目当てのルートが探せない。

ロデジャーと同様、8a.nuというアプリでアッセンド数が多いルートを選ぶのが無難。

あとはもちろん、安定のTKDブログ

エリア・ルート紹介

今回、シウラナで登ったのは2日間だけだったけど、行ったエリアとトライしたルートについて記載。

El Pati

シウラナの看板エリア。有名なLa Rambla(9a+)などもこのエリアにある。

アプローチは5分程度午前中は日陰になる。

岩棚の上がビレイポイントになるルートが多いけど、後述のLa Siuranellaに比べると狭くはなく、割と快適。

Q
✅Lame Chucha L1(6b+), FL

アップで取り付いたけど、出だしから悪くて落ちるかと思った。笑

シウラナは基本垂壁なので、ロデジャーと比べると持久要素は少なく、低グレードでも核心はそれなりに難しい印象。

Q
✅Viagraman(7a), FL

割と素直で登りやすかった気がする!(あまり覚えてなくてテキトーw)

Q
✅iAy Mamita!(7a), mOS

とにかく長い!しかも最後はランナウトしつつ、小悪いところがあって緊張する。笑

クライマーを探せ的な
Q
✅El Corridon(7a+), FL

中間部の核心は結構難しい。僕はリーチ的に合っていたのか、なんとか一撃できたけど、キクさんは珍しく苦労していた。

Q
✅El Prado Del Rey(7b+), RP, 1d3go

ルート長は約30m。決して短くはないルートだが、どちらかというと難しさは核心の数手に集中している。

とはいえ核心を除いても恐らく7a以上はあり、核心直前の浅いフレークでのレストもトリッキー。もちろん持久力やレスト力も要求される。

核心のムーヴは正対で極めてシンプル。手の薄カチは特別悪くはないけど、フットホールドがかなりの粒足。クリンプと掻き込み、両方苦手だと尾張

キクさんはフラッシュ!カチでの引き付けホント強い!

El Cargol

El Patiのすぐ隣にあるタワー

上の写真の面は、正午過ぎまで陽が当たらない。反対側にもルートがあり、80mロープでギリギリのロングルートも。こちらは午後日陰となる。

Q
✅Jeketepeke(7a+), mOS

「ジェケテケペ」と読むのだろうか?やたらeが多いルート名。笑

個人的にはかなりオススメ。簡単なクラックからスタートし、右トラバースから小ハングを越えて核心部のフェイス。最後はカンテ登りからマントルを返し、岩棚に完全に立って終了点にクリップできる。

ただ中間部のライン取りが悩ましい。素直なボルトラインはかなり悪そうに見え、左に目をやるとガバクラックが見える。チョーク跡を見る限り、ガバクラックから登っている人が多そうだ。

かなり迷ったけど、ガバクラックのラインをチョイスした。

La Siuranella-Est

El Patiと谷を挟んだ反対側にあるエリア。El Patiから10分弱くらいだったと思うので、駐車場からは約15分のアプローチ。

上の写真は、午前中にEl Pati側から撮ったもの。午後からは日陰になるため、El Patiに陽が当たり始めると、クライマーが一斉移動

岩壁の低い位置に、水平の帯が入っているのが写真でも確認できる。ビレイと各ルートの取り付きは、このリッジからとなる。

二子山の二段岩壁や、黒部の水平歩道(行ったことないけど)のようなイメージ。リッジは場所によっては寝転がれるくらいの幅があるが、すれ違いができないほど細いところもある。ワイヤーケーブルが張られているので、セルフブレイを確実に。

この水平歩道には、地面からヴィアフェラータ(ハシゴなどが設置されている個所がいくつかある)で上がる。なお、水平歩道から地面に下りるための懸垂支点のようなものは見当たらず、みんなヴィアフェラータをクライムダウンしていた。

荷物が多いと大変なので、必要なもの以外は地面にデポった方が良いかもしれない。そういう意味では正直、割と面倒くさいエリアだ。笑

Q
❌Lo Mes Negre(7a), 未完登, 1go

序盤からかなりの強度!上部のスラブも、5.8スラバーの僕にとっては簡単ではない。

7aとしてはかなり難しめだと思う。キクさんはフラッシュ。強いねー。

Q
✅D’Estranquis(6c), mOS

確かクラックのムーヴがトリッキーで面白かったけど、6cとしては結構難しかった記憶がある。

Q
✅Hasta La Fixe De La Jolla(7a), mOS

Siuranella-Estの水平歩道の中でも、一際細い部分から取り付く必要があるけど、オススメしたいルート。

ガバガバのアプローチからスタートし、パワフルなトラバース。上部は長く一定強度が続く持久系。

Espero Primavera

El Cargolから数分、駐車場からは7~8分のアプローチ。

取り付きが広くて平らだが、ほぼ一日中陽が当たるエリア。でもMandragoraはぜひトライして欲しい。

Q
✅Mandragora(7b+), RP, 1d2go

オレンジ色の美しいフェイス。終了点を守っているかのような小ルーフまでチョークの道が続いていて、人気ルートであることが一目でわかる。

もう少し気温の低い時期には順番待ちが絶えないらしいけど、ほぼ一日中陽が当たるため、5月は空いているらしい。この日は風があって比較的涼しかったけど、誰もやってなかったのでトライ。

純粋に保持力を求められるトラバースからスタート。そしてクライミングの美しさが詰まりに詰まった2~5P目。ホールド自体はかなり悪いんだけど、ムーヴがピタッとはまると劇的に負荷が軽くなる。保持力が全てではないことを改めて教えてくれる。

しかし、TKDブログにもある通り、この核心を抜けてからが地獄の始まり。8P目までガバらしいガバはなく、ひたすら小悪いホールドが続く。でもレストなしではもたないので、攻めのレスト(悪いホールドでも戻ってくることを信じてシェイクすること)入れまくりで突破。ランナウトも容赦なくて精神的にもキツイ。

9P目横の小さなリッジでノーハンドレストでき、そこから上はやや易しくなるけど、最後のハング越えでいやらしいムーヴ。70mロープビタビタで下りてこれます。

エピローグ

スペインクライミング最終日の19時過ぎ、  キクさんが別の難ルートで感動的なmOS。ツアーの締め括りに相応しいクライミングだったけど、Mandragoraに我々のヌンチャクが残っていて、僕のトライ順…。

前の便でバラすにはバラせていたけど、各駅停車状態でまだ繋がる感じではなかった。ただキクさんの素晴らしいトライの後、しょうもない登りでツアーを終わらせる訳にはいかない。間違っても「テンション」なんて言える雰囲気ではなかった。笑

キクさんのトライに感化されたのか、珍しく集中力が研ぎ澄まされた。ほぼ一日中陽が当たるこのルートも、19時半を過ぎてようやく日陰になり、SFTに突入。

できると思ってなかった下部の核心を突破。そこから先は100回くらいテンションて言いかけたけど耐えに耐え、終了点で歓喜の雄叫び。

登攀時間23分間の大奮闘。最後の最後までガンバの声を送り続けてくれた仲間に感謝。

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ABOUT ME
きい
きい
登ったり滑ったりする人
1988年生まれ、愛媛県出身
東京の北西部に住み、週末は専らさらに北や西に出かける
仕事は電機メーカーのエンジニア
クライミング:2021年からリード&外岩を始めて本格的に
スキー:2017年からバックカントリーにハマる
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