2025GWスペインクライミングツアー:マルガレフ編

この記事は、2025年GWに行った、スペインクライミングツアーについて書いたものです(全5回のシリーズ)。
- 第1回:準備編
- 第2回:ロデジャー編
- 第3回:シウラナ編
- 第4回:マルガレフ編(本記事)
- 第5回:トラブルとツアーの振り返り編
岩場の概要
ロデジャー、シウラナに続き、有名なマルガレフ(Margalef)で1日だけ登ってきた。
やはり石灰岩の岩場だが、礫岩が大いに含まれているようだ。

丸っこい小さな石が集まって大きな岩になっている感じ。見た目はボツボツしていてやや気持ち悪い。その小さな石が抜けた部分がポケットとなり、マルガレフにおけるホールドの大きな特徴になっている。
また、表面にやや飛び出した小さな石が、カチやスローパーになる場合もある。
岩の構成から想像がつくかもしれないが、全体的に脆く、長く登られているルートでもポロポロと剥がれた部分がたまに落ちてくる。
表面はスベスベした感じでフリクションに乏しく、フィンガリーなホールドが多い割に、シウラナ(Siurana)と比べると指皮にはマイルド。
ホールドの大部分を占めるポケットは、手では持てても足では踏めない場合が多く、フットホールドは悪め。
シウラナでもオープン持ちのホールドはよく出てくるが、ガチャ持ちになりがち。マルガレフは丸く開いた素直なポケットで、ジムのポケットに近い。サイズは様々で、ツーフィンガーやモノも結構ある。
コルネはないため染み出しは少なく、岩が露出したエリアが多いこともあり、雨後の乾きは早い。
垂壁からどっ被りまであるが、いずれにしても極端なガバは少なく、傾斜に比例してグレードも上がるようだ。有名ルートとしては、Perfecto Mundo(9b+, クリス・シャーマがボルトを打ち、アレックス・メゴスが初登)などがある。
トポを見る限り、ルートの長さはロデジャーやシウラナに比べると短く、20~25mくらいが中心だろうか。
岩場の規模はやはり巨大で、全部はまったく把握し切れない。
車でのアクセス
バルセロナからマルガレフまでは車で2時間15分ほど。ジェイダ(Lleida)からは1時間くらい。
いずれにしても、マルガレフの周辺はワインディングロードが続く。最後はどちらかが譲らないとすれ違えない道路の幅なので、運転には注意。
岩場は広大で、6つくらいある駐車場から行きたいエリアに近いところを選ぶ。
今回はP5(Google MapではParking Finestraで出てくる)を利用。

上の写真の範囲外にも止める場所はあるので、キャパはそれなりに大きそう。
宿泊
今回はマルガレフとシウラナ、どちらでも行ける場所をということで、モンサン(Cornudella de Montsant)という小さな街に泊まった。シウラナまでは約10分と近いが、マルガレフは50分ほどかかる。
マルガレフという名前の小さな街があり、こちらは岩場まで10分ほど。次回、マルガレフで何日か続けて登る場合は、この街に泊まるつもりだ。なお、マルガレフの街にはクライミング帰りに少しだけ寄ったので、下でその様子を書いています。
ジェイダ(Lleida)は比較的大きな街で、スーパーはもちろん、何でも手に入る。マルガレフまでは1時間ほど。ロデジャー(Rodellar)までも1時間半くらいなので、日によってコンディションが良さそうな岩場を選ぶということも出来なくはない。
岩場へのアプローチ
今回行ったRaco de la Finestraというエリアは、P5から5分弱と非常に近い。
トポを見ても、各駐車場から10分以内で行けるエリアはたくさんあるので、アプローチには優れた岩場と言えるだろう。
ただし、地面にも結構あるマルガレフの岩は、雨で濡れるとめちゃくちゃ滑るので要注意だ。
シーズンと気候
今回はGWの時期に行ったが、日当たりが良いエリアが多いため、本当はもう少し気温が低い時期が良さそう。現地で話したクライマーによると、暑さはシウラナより若干マシとのこと。
Raco de la Finestraというエリアは、東・北・西の三方位に壁があるので、どの時間でも日陰を選べて快適だった。
トポとルート選び
今回はTarragona Climbsという紙のトポを使用。写真に引かれた各ルートを示す線は正確で、お目当てのルートが決まっていれば、それを見つけるのに苦労はない。しかし、☆や解説はなし。
Vertical-Lifeというアプリで、アッセンド数が多いルートを選ぶのが無難。
Margalef Rock Climbing Guidebookは、各ルートに☆と解説があり、非常に完成度が高い。
鉄板のTKDのブログは、もちろんマルガレフも収録。
マルガレフの街
登った帰りにちょっと寄っただけで、泊まった訳ではないが、街の様子について。
モンサンと同じか、もう少し小さいだろうか?やはり数十分あれば、ぐるっと一周歩けそうな規模。

雰囲気もモンサンと似ていて、歴史を感じさせる(スペインの小さな街はどこもこんな感じ?)


ちょっとした売店に加え、食事をするところもあるので、数日くらいの滞在なら特に困らなそうだ。

なんと街の中にもポケットホールドが豊富な壁が。さすがにボルトは打ってなかったけど、ばっちりチョーク跡はあった。笑

記念に買ったTシャツ。上の写真の売店かカフェバーで、€15で手に入ります。ただイラストは日本の漫画風?笑

街の入り口にある標識で写真を撮るのが定番ムーヴ。結構高さがあるので、僕がおんぶしてkjarはぶら下がってた。
ちなみに標識はエッジの立ったガバカチで、結構手が痛いらしい。撮影者は速やかにシャッターを切りたい。笑
エリア解説(Raco de la Finestra)
今回1日登った、フィネストラというエリアの紹介。

訪れた日は、朝までかなりまとまった量の雨が降り、見渡す限り周辺の岩はビショビショ。我々の車以外には1台も止まっていない。
「これは次回に向けた下見だけして帰るしかないな~」と話しながら、P5から5分もかからないフィネストラに空身で向かう。


フィネストラには、ルート上部に岩が覆い被さった部分が結構あり、そこは全く濡れていない!もちろん車にギアを取りに戻り、このエリアで登ることに。
さて、本題のエリア解説を。傾斜は垂壁から薄被り、どっ被りまで揃う。ホールドは基本ポケットで、極端なガバは少ないので6台はあまりないが、グレードも幅広い。

有名なPerfecto Mundoがあるのもこのエリア。ちなみに、めちゃくちゃ被っている。

強傾斜を中心に、ヌンチャクが残置されたルートも多い。
東・北・西それぞれの方位の壁があり、どの時間帯でも日陰で登れる。南向きで日当たりの良いエリアが多いマルガレフにおいて、春・秋向きのエリアと言えるだろう。
フィネストラだけでルートは100本以上あるので、ここだけでも当分遊べそうだ。

程なくして、クライマーの数がどんどん増えてきた。21時頃まで明るいので、日本と違ってみんな朝はゆっくりだ。笑

朝は濡れていた部分も、帰る頃にはすっかり乾いていた。これはフィネストラに限らず、マルガレフ全体に言えることだと思うが、乾きは花崗岩並みに早い。
ルート解説
今回フィネストラで登ったルートの紹介。
- ✅Sancho Pancho(7a+), 2go
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垂壁とはいえ、このグレードでしっかりモノポケットも出てくるが、核心はムーヴの組み立てが難しい上部。
手の左右が逆になってしまいがちで、オンサイト難易度は高め。
下部でジワジワと削られ、核心を抜けた後も終了点まで気が抜けない。マルガレフで最初に触ったルートだが、いきなりの好ルートで一気に楽しくなってしまった。
オンサイトトライは核心落ちで、なんとか2撃。少しHard寄りかもしれないが、ムーヴがわかれば7a+の範囲内だと思います。
- ✅Viatge a Sigoyer(7b), 4go
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Sancho Panchoとスタートは共通だが、こちらは下部でボルダー核心。二子山のサバージュ(8a+)を思い出す、1.5本指ポケットからのハイステップがとにかく苦しい。
核心の直後も結構難しいが、そこを抜けると休むことができ、終了点に近づくにつれて易しくなっていく。
下部に強度のあるワンムーヴがあり、グレーディングはやや悩ましそうだが、7b+でもいいように思う。
1.5本指ポッケからのハイステップがなかなか上がらず、4便目でなんとかRP。窮屈なムーヴなので、小柄な人の方が登りやすいかもしれない。
ちなみに、これまたスタートが同じで右隣のL’Autoexigencia(7c)は、かなり甘めという話。
さらにL’Autoexigenciaの右にある2本(スタートが同じで下部で分岐し、7a+と7b)も朝から乾いており、多くのクライマーが取り付いていた。
- ❌Bimbirimboies(7b), 1go
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上の2本とは離れた位置にあり、傾斜もこちらは少し被っている。
下部はガバガバ。上部も特別難しいところはないが、極端なガバもないのであまり休めず、一定の難しさが続くエンデュランス系。
オンサイトトライは惜しくもなくフォール。時間の関係でこの1トライのみ。


