【小川山】クラック・スラブ・チムニー全部入り!大貧民ルート

クライミング日:2025年7月27日(日)
今回のクライミング
今シーズンから始めた、マルチピッチのクライミング。
マルチのルートには、チムニーが出てくることが少なくないらしい。今回は、まだやったことのないチムニー体験のため、小川山の大貧民ルートに向かった。
また、これまでのマルチはすべてシングルロープで登ったが、初めてダブルロープを使用。
大貧民ルート(5p, 5.8)
取り付きへのアプローチ
まずはお殿様岩の、イムジン河を目指す。

実際に目にするのは初めてだが、見た目だけですでに四つ星が付きそうなルート。いつか触る日が来るのだろうか。
下調べで、大貧民ルートの取り付きはイムジン河のすぐ近く、という事はわかっていた。これだけ明確な目印があるのであれば、取り付きもすぐわかると思っていたが、甘かった。
トポには取り付きについて、
- 取付のテラスへは裏からトンネルをくぐって来る方法
- 「イムジン河」の下からチムニー状ルンゼを登って来る方法
の2種類が書かれている。楽なのは❶とのこと。
イムジン河の下のFIXロープがあるところから少し降り、一旦大きく左から回り込む土の踏み跡に沿って登って行くと、すぐにそれらしいトンネルが見つかった。

上の写真のチョックストーンの下をくぐり、チョックストーンの上に立ってみるが、それより先には行けそうにない。
一方、このトンネルの先には、もう1つ大きなチョックストーンが見える。

新たなトンネルの先には、丸太とロープが見えているが、そこまでノープロで行くのはかなり怖そう。
どうやら様子がおかしいので、仕方なくトンネルを引き返すことに。
もう一方の❷だが、こちらは「チムニー状ルンゼ」がどこを指すのかわからない。
今度は小川山本を見てみる。「スタートはイムジン河へのフィックスを登り、さらに左手の斜面を5mほど登った立木のあるテラスから」とある。

上の写真のフィックスを登り、左手を覗いてみるが、ここもノープロで進むには怖そう。フィックスを降り、再び同じ場所に戻る。
低グレードのマルチでは、ルートの傾斜が緩いことで、取り付きを見つけるのが難しくなることもあるようだ。歩き回っている内に、ふと足元を見下ろすと、ボルトがあってすでにルートに入り込んでいた、なんて話も聞く。
自信は持てなかったが、上の写真のフィックスを降りたすぐ近くの場所から登り始めることに(結果的にはそれで正解だったようだ)。
1p目(5.8)

ハンドジャムがしっかり決まるクラックを登っていく。すぐに傾斜が緩くなるが、その先もクラックが続いている。
右のフェイスにぶつかるところで、フレークをアンダー。ここで特徴的なガバのコブがある大木に移るが、我々はここでピッチを切った。
その上は大きな岩が重なった階段登りで、そこを抜けると大テラスになっており、ここまで進んでピッチを切るのが正解だったようだ。
2p目(5.7)
まずは大テラスから右上クラック。ここはジャミングではなく、クラックをホールドとして持って登った。クラックの終わりの部分がちょっと悪い。
「2p目は右上クラックから左上クラック」と聞いていた。大テラスから見上げると、ややオーバーハング気味の左上クラックが確認でき、「この見た目でホントに5.7!?」と思ったが、これではないので安心して欲しい。
右上クラックが終わると、傾斜の緩い左上クラックが現れる。こちらはジャミングで突破。
そこから先は、簡単な歩きで終了点の立木へ。
1p目の終了点を本来より手前にしてしまったこともあるかもしれないが、プロテクションの取り方がマズく、ロープドラッグで綱引き大会になってしまった。。。

3p目(5.7)
まずは右方向に延びるバンドを進んでいく。ホールドが乏しく、枯木をアンダーピンチ。
バンドの終点に細い木があり、ここで一応中間支点が取れる。
ここからプロテクションが取れないスラブ。バンドからスラブに乗り上げる最初の一歩が悪く、バンドを行ったり来たりしながら、なるべく良い部分を探す。
スラブに入ると、ダイクを使いながら登って行く。このピッチはゆきりんがリードしくれたので、僕はフォローだったが、リードはかなり緊張感がありそうだ。
スラブを抜けると快適なテラス。屋根岩が綺麗に見える。

4p目(歩き)

マルチピッチの世界では、歩きの定義広過ぎませんか。。。確かに水平移動ではあるのだが、怖さという面ではこのピッチが1番だった。
ワイドクラックを跨ぎ越す一歩、さらに反対側のスラブに乗り上げる瞬間は、かなり緊張した。
ワイドクラックの手前には、陽の当たる場所(5.10a)の終了点があり、ここでまずプロテクションを取った。せっかく全ピッチオールナチュプロで登れるルートなので、少し抵抗はあったが、それ以上に怖い。
クラックを跨いだ状態で、奥のフレークにカムをセットし、そこからスラブ面に乗り上げた。
少し歩いた先にある立木でフォローのゆきりんをビレー。ここは枯れ木も多いので注意。
5p目(5.4)

大貧民ルートのクライマックス。冒険感溢れる洞窟チムニー。
僕にとっては初めてのチムニーだ。グレードが当てにならないことは、聞いた話から大体知っている。
リードのゆきりんは、ノープロでサクッと抜ける。ヘルメットやザックなどを、先にロープで引き上げてもらう。
そして僕の番。最初はそれほど狭くなくて、アスレチック感覚で楽しい。しかし、あと1~2mというところで行き詰まる。
このチムニーは、太った人は本当に通れないらしい。僕は身長こそ高いものの、クライマーの中でも細身なので、正直あまり心配していなかったのだが。。。
とりあえず、腰のチョークバッグを外し、上にいるゆきりんに受け取ってもらう。ハーネスのギアループにぶら下げたカム類も、同じように先に上げようとしたが、思うように身動きが取れなくて外せない。登り始める前に、要らないものを全部外せばよかった…。
体がスタックしているので落ちる心配はなさそうだが、上にも横にも進めない。おまけに本降りの雨が降り始め、チムニー内もどんどん濡れていく。
10分くらい悪戦苦闘していただろうか。上で濡れながらビレイしてくれているゆきりんには、本当に申し訳ない。。。もうこのまま僕を残置して、先に下りてもらおうかと思った。
動ける範囲で色々と体勢を変えていると、ようやく進めるように!ずりずりと這い上がり、雨で濡れたお殿様岩の頂上(最高点へはさらに小さな岩塔を登る)へ。

下降
小川山本では、NINJAの終了点から懸垂下降する方法が書かれている。しかし、これだと取り付きの反対側に降りることになるので、取り付きに残置した荷物の回収がやや面倒だ。
最終ピッチのチムニーを抜けたところにある、予期せぬプレゼントの終了点から懸垂下降したところ、取り付きのすぐ上に降りられた。

ふりかえり
アルパイン感満載だった大貧民ルート。取り付きを探すところから苦労したが、こういう事も醍醐味の一つなんだろうな。
最終ピッチのチムニーにも大苦戦。一つずつ経験ですね。
雨に濡れながらの下山になったが、降り始めがルート最終盤で助かった。ヘルシーの湯で体を温め、久しぶりのみずがき食事処で遅めの昼食。
