【瑞牆】ワイドクラック体験:摩天岩と末端のまったん

クライミング日:2025年8月30日(土), 31(日)
今回のクライミング
今シーズンから始めたマルチピッチ。
小川山で低グレード(僕にとっては決して簡単ではない)のマルチルートは何本か登ったが、瑞牆はまだ行ったことがない。
瑞牆のトポを見てみるが、ワイドが出てくるルートがとにかく多い。グレードは5.9とかでも、スポートでのグレード感覚が全く通用しないことは、聞いた話から知っている。
そんな中、マルチの師匠であるゆきりんを通じて、ワイドに連れて行ってくれるという人が現われた。
という訳で今回は、クライミング界の3K?(きつい、汚い、危険)、ワイドクラック体験の話。
Day1(Sat):摩天岩
不動沢駐車場から約1時間半、下りも1時間くらいかかった。山頂まで、もうそれほど遠くない場所だ。
C6のカムまで背負い、このアプローチはなかなかだったが、最終盤まで登山道沿いなので、それほど迷う心配はない。瑞牆本に書かれている通り、「左王冠岩」と書かれたブルーの看板を目印に登山道を離れ、踏み跡を数分辿ると到着。
こんなところまで、わざわざワイドをやりに来る物好き(失礼…)なんているのかなと思ってたけど、意外にも女性同士のパーティーが2組来ていた。
✅レインボー・クラック(5.8), OS

これはワイドではないんだけど、このエリアで数少ない、僕がリードできそうなルートだったのでトライ。
下部でフレークが下を向いているところが難しい。クラック内が濡れていることもあったが、フットホールドがなく、スメアになって怖い。思い切って、なんとか立ち上がった。
あとは凹角をレイバックで登る。終了点前はスラブのトラバースだが、フットホールドは明確で、それほど難しくはない。
立ち木にスリングと残置ビナあり。
❌かぜひきルート1p目(5.10a), 1go

見た目抜群のオフウィズス。瑞牆本では四つ星が付けられている。ルート説明には、アームバー、Tスタックなど、聞いたことのない言葉が並んでいる。
見た感じ、全く登れる気はしない。リードはあまりにも無謀なので、りゅうげんが掛けてくれたトップロープでトライ。

このワイドクラックは、地面の直前で途切れており、まずクラックに入るところが難しい。右手のプッシュを使い、なんと体を隙間に入れる。
瑞牆本にも書かれているが、かぜひきルートにはまともなホールドがほとんどなく、とにかくごまかしが利かない。
りゅうげんに教わりながら、左手をクラックの奥でジャミングし、なるべく体が外に出ないようにする。右手は逆手(ガストンの向き)にするが、これは面を押さえてバランスを取る程度。
体を上手くスタックさせ、基本的には足で登っていくらしい。ヒール&トウとかいう技術を使うそうだ。
クラックの奥に入り過ぎると、体全体がバチ効きして身動きが取れず、落ちないが上にも進めない。逆に外に出過ぎると、フレアしているので、支えがなくなって落ちる。
ムズい、ムズ過ぎる…。ちょっと進んではテンション。トップロープで下部でぶら下がるので、ロープが伸び、進んだ分と同じ分くらい下がってしまう。
30分以上格闘したが、最終的な高度は地面からわずか3mほど。喉がカラカラになってしまった。
下りた後の反省点として、僕は足をスタックさせようとシューズの角度ばかり気にしていたが、もっと体全体を回転させることが重要らしい。

その他のルート
電光クラック1p目(5.9)も人気ルートのようだ。ゆきりんはかぜひきは登れなかったものの、電光クラックは見事オンサイト。

かぜひきをオンサイトしたりゅうげんは、陽炎1p目(5.10c)にトライ。かなり粘ったものの、惜しくもフォール。

ちなみに、陽炎の左側を左上するクラックは、蜃気楼1p目(5.10c)。こちらはワイドではないが、陽炎と同じく、めちゃくちゃカッコいい。
Day2(Sun):末端のまったん
翌日もワイドのエリアへ。
アプローチに関しては、こちらのブログを参考にさせていただいた。ガイドブックに書かれている説明とは逆になるが、岩小屋を右に進んで行くと、さほど迷わずに到着。
登りは1時間弱。結構急登なので、下りは割と早い。前日が摩天岩だったので、近く感じてしまった。笑
✅まったりチムニー(5.6)
下の写真の岩と岩の間を歩いて取り付きへ。中間部の右側にあるチムニーを登る。

チムニーは、小川山の大貧民ルート(以下の記事参照)で経験している。

大貧民ルート最終ピッチのチムニーは、小川山本だと5.4。フェイスだと聞いたこともないようなグレードだが、大いに苦戦した。
今回は5.6。しかも大貧民ではフォローだったので、緊張のリードトライ。

まずは、クラックの奥へと歩いて行く。かなり狭いが、大貧民よりはやや広い。とはいえ、ヘルメットはかなり邪魔になるレベル。
チョックストーンの手前まで進み、そこから上へと登って行く。プロテクションは取れない(チョックストーンにスリング巻くという手はありそう)が、まぁ落ちたくても落ちられない幅だと思う。
チョックストーン使いつつ、ずり上がっていくと、徐々にクラックが広くなる。狭苦しさからは解放されるが、今度はワンチャン落ちられそうな幅で怖い。
オブザベでは、上部は背中で左側の壁にもたれかかり、足の裏で右側の壁を押す(バック&フットと呼ぶらしい)イメージだった。しかし、現場に行くと思ったより幅が狭く、その体勢に持ち込めない。
怖いので、上の方にあったチョックストーンと左側の壁の間に、C4をセット。あとは右側の壁のフットホールドとカチを使い、半分普通にフェイス登る感じで登った。
一旦テラス?に出たのはいいが、先ほどセットしたC4の位置が悪く、ロープがスタックしてしまう。テラスの奥にC5をセットし、なんとかクライムダウンしてC4を回収。
テラスから再度外に出て、ちょっと怖いけど簡単なトラバースをしたところに立木発見。しかし、トポのイラストからすると、終了点はもっと上のはず。
このあたりと思える場所には、高さ1mもなく、手首よりも細そうな木しかない。細くても、腐っていない立木は割と支点として使えると聞くが、経験が無さ過ぎて判断が付かない。
仕方なく、マルチルートのピッチ間の繋ぎのような場所を、草木をかき分けながら奥まで移動。そこに太い木があったので、懸垂で下りた。
✅クリスタルクイーン(5.9), FL
特に光が差し込む時間帯は、神秘的な洞窟のような雰囲気。下部は、ここの右壁に走る、綺麗なハンドクラックを登るルート。
先に登ったゆきりんが、「登ってみると思ったより中は暗かった」と言っていたので、ヘッデン装着でトライ。

上手な人であれば、ジャムバチ効きの快適クラックだと思うが、クラックが正面よりやや右を向いている。これだけで僕には結構難易度が上がる。


高度が上がり、やや余裕が出てきたところで僕もジャミング。

特に限定とかはないと思うが、少し腕が張ってきたところで一旦テラスに着地。使わない方が充実しそうだけど、奥の窓をバックに、なんだかカッコいい写真になった。笑

ハンドクラックは上部で途切れ、そこからはチムニー登り。「まったりチムニー」に比べると幅が広く、バック&フットで登れた。
こちらは滑ったら落ちるサイズだが、前後の壁でプロテクションは取れるので、プレッシャーは少ない。
最後は前側の岩に乗り移る。ボルト2本の終了点にクリップ後、簡単に岩頭に立てるので、ぜひ絶景を楽しんでほしい。
グレードはハンドクラックの部分に付いていると思うけど、上部でチムニーの練習もできるし、洞窟探検している気分。これはめちゃくちゃ楽しい。
その他のルート
りゅうげんとゆきりんは、「トラベルチャンス末端の末端」という5.10cのワイドにトライしていた。

長さはないが、とてもスッキリしたワイドクラック。下開きになっていて、幅が狭まる上部が特に難しそうだった。

ふりかえり
岩の間に挟まり、ズリズリと這い上がった2日間。
普通のクラック以上に、フェイスでのクライミングとはかけ離れており、クライミング経験がない人がやっても、僕とそれほど変わらないかもしれない。それくらい、今までの経験が通用しなかった。
りゅうげんとゆきりんは、体のあちこちが擦れて赤くなり、特に下半身が疲れたと言っていた。一方の僕は、ヒジの辺りをちょっと擦り剥いた程度で、ヨレているのは前腕。たぶんやってることが違うんだろうな。笑
僕が初めてワイドに挑戦すると知った別のクライマー(ワイド上級者)から、事前に「ワイド嫌いにならない程度に頑張ってね」と言われていたが、その意味がよくわかった。笑
ワイドクラックは、常に体の一部(大部分?)をスタックさせ、ちょっとずつ登るのが基本のようだ。ダイナミックな動きが多い現代クライミングと比べると、正直かなり地味で、忍耐が必要。
とはいえ、ほんの少しではあるが、コツのようなものもわかった。次回はもう少し上手く登れそうな気がする。教えてくれたりゅうげんに感謝。