辺戸岬・宇佐浜クライミングツアー
この記事は、2024年2月に行った、沖縄は辺戸岬・宇佐浜でのクライミングツアーについて書いたものです。
はじめてのクライミングツアー
本格的にクライミングを始めてから、関東圏の色々な岩場へ行った。しかし、そのいずれも日帰り圏内で、いわゆる「ツアー」でのクライミングは未経験。
そんな中、モトハシさんから辺戸岬への誘いがあった。ROCK & SNOW 097号でその存在を知り、行ってみたいと思っていた岩場だ。他のクライマーからも、とても良い岩場だという話を聞いていた。
ツアー時期が2月中旬ということで、バックカントリースキーのベストシーズンと重なるため少し迷ったが、行ってみることにした。
同年のGWに、スペインへクライミングツアーに行くことが先に決まっていたため、その前にまずは国内でのツアーを経験しておきたかった。ちょうど良い機会だ。
ツアー計画
今回のツアーメンバーは、モトハシさん、イイヅカさん、かいてぃー、そして僕の4人。僕以外の3人は、前年の2023年2月にも辺戸岬へ行っており、今回が2回目。
モトハシさんによると、3月や4月の方が天気は安定するらしいのだが、場所は沖縄。少しでも涼しい時期が良いだろうということで、今回も2月に行くことに。
早朝に羽田を出発し、帰りも夜羽田着の便にすれば、行き帰りのフライトの日もそれぞれ半日ずつは登れるとのこと。レストなしの4連登で行こうということで、3泊4日に決定。
ツアーでのクライミングは初めてで、確か4連登も経験がないと思う。
1日あたり何便くらい出すか、どれくらいのグレードを狙うか…。4日間トータルで満足のいく成果をあげるには、どう登るのが良いのか、ついつい出発前から考えてしまう。
なお、航空券や宿の予約などは、すべてモトハシさんがやってくれた。感謝。
航空券
行きも帰りもソラシドエアー。金曜と月曜は有休を駆使。
往復で¥24,420。沖縄だと、一般観光客はマリンレジャーがメインだと思うので、2月はローシーズンで割と安め?
行き
3h00m
帰り
2h10m
宿泊
名護市内で探してAirbnbで予約。3泊4日で一人当たり¥16,225。
那覇から名護まで約1時間、そこから辺戸岬までは、さらにもう1時間くらい。今回のツアーで初めて知ったんだけど、沖縄本島の北半分はほとんど何もない。
もう少し岩場に近いところに泊まる場所があるという話も聞いたけど、買い物や食事の都合を考えると、名護が無難だと思う。
レンタカー
今回は4人でのクライミングツアーということで、各自のギアを積むことを考え、少しゆとりのあるサイズをチョイス。
借りた車はトヨタのRAV4。初めて乗ったけど、ラゲッジスペースが大きく、余裕で4人分の荷物が載せられた。
4人で割り勘し、一人当たり¥7,150(ガソリン代等は別)。
岩場の概要
車でのアクセス
上で書いた通り、ある程度規模のある街の中で一番近い名護から1時間くらいかかるが、美しい海を見ながらのドライブ。信号も少なく、あまりストレスはない。
アプローチの入り口に墓地があるためか、大きな駐車スペースがあり、満車の心配はないと思う。
アプローチ
駐車スペースから岩場までは約15分。特別近くはないけど、砂浜の水平移動なので、気持ちの良いアプローチ。
アプローチの入り口からずっと岩が見えているので、もちろん迷う心配はないけど、なかなか近付いてこない。笑
砂浜歩きは気持ち良いけど、足が埋もれながら歩くので、意外に下半身が疲れるw。
岩質とルートタイプ
沖縄のクライミングというと、琉球石灰岩の具志頭ボルダーが有名なようだが、辺戸岬は普通の石灰岩らしい。
ただし、二子山や御前岩とは違い、コルネはほとんど発達していない。
ルート長は15m前後が中心だろうか。傾斜は薄被りで、細かいカチでの引き付けが多く、僕の得意系だった。
5.7~5.13まで幅広いグレードが揃っていて、レベル差のあるメンバーで行っても楽しめる。沖縄らしいルート名が多いのも良き。
天気とコンディション
2月中旬といえば、二子山や御前岩では凍えながら登っている時期だが、辺戸岬は寒さより暑さが心配なくらいだ。
風がある日は日影ではフリースを着ていたが、念のため持って行った薄手のダウンはお守りに終わった。
今回は幸い、4日間とも雨は降らなかった。染み出しも全くなし。モトハシさん達の話では、多少の雨でも登ることが可能で、雨後の乾きも早いらしい。
各エリア解説
各エリアといっても、岩場自体が非常にコンパクトで、ほとんどのルートが半径50m以内くらいに集まっている。
関東圏で海辺の岩場というと、城ケ崎を思い浮かべるが、辺戸岬は磯ではなく綺麗な砂浜。
メインウォールとアンダギー岩の間は日影が多く、頭上は開けているものの、洞窟のような雰囲気。靴に砂が入ってくることを除き(サンダルも持って行くと良いかも)、休憩時の快適度は過去イチ。砂浜で波の音を聞きながらの昼寝は至福。
メインウォール
人気ルートのうるま(5.12a/b)やPMA(5.13a/b)をはじめ、5.12以上のルートがずらりと並んでいる。特にルート下部は、日影になる時間が長い。
100岩には、PMAの左奥から「アッパーウォール」に上がれると記載があるが、現在はアプローチが崩壊?していて登られていないようだ。
アンダギー岩
5.11台のルートが多く引かれている。5.10以下のルートもあり、アップにも最適。特に海に面した北面は見晴らし抜群。
Aquarium Wall
ロクスノ097号で紹介されている、2020年以降に開拓された新エリア。
メインウォール、アンダギー岩とは少し距離が離れている(とは言っても数分程度)。アプローチとビレイポイントが岩礁になっており、満潮時には足が濡れることもあるので、潮汐表は要チェック。
ハーフドームボルダー
アンダギー岩のすぐ横にある小さな岩。2本のトップロープ課題がある。反対側から登ってロープを設置可能。
混雑度
今回はほとんど貸し切りだったけど、モトハシさん達が前年来た時は、他にも数パーティーいたとのこと。
3連休などは本州からの遠征組が重なる可能性はあるかもしれないけど、順番待ちの心配はあまりなさそうだ。
今回は3日目の日曜日に、米軍基地で働いているというグループが来ていた。お昼頃から登り始めて、ビーチにテントを広げ、子供も一緒にトップロープセッション。恐らく国際的に見ると、これが一般的なクライミングの楽しみ方。笑
Day 1
早朝便で羽田を出発し、レンタカー借りて名護のA&Wで昼食をとったりしつつ、岩場には14時頃到着。
- ✅ブエノチキン(5.11b) mOS
-
まずはアップでこのルートにトライ。それほど悪いムーヴやホールドはなく登りやすい。グレードは甘めかな。
- ✅うるま(5.12a/b) 1d3go
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辺戸岬の看板ルート。
強度のあるパートが3つ。それぞれの間でシェイクは入れられるものの、しっかり休めるという感じではない。ホールドの種類や向きが豊富で、登っていて楽しい。総合力が求められる好ルート。
結構難しくて、スラッシュなしの5.12bでいいと思う。
- ❌PMA(5.13a/b) 1d2go
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看板ルート「うるま」を登って最低限のお土産を確保し、今回のツアー最大の目標であるPMAへ。
正直、短期ツアーで13を触るのは勇気が必要だった。ある意味、すぐに諦めが付けばまだいい。ワーストケースは出来そうで出来なくてハマってしまうこと。何と言っても場所は沖縄。他にもルートはたくさんあるし、また来週という訳にもいかない。
しかし、岩場に着くと一番に目に入るライン。オレンジ色の壁がカッコいい。これはどうしてもトライしたい。
終了点を除いて6クリップ。長いルートではないが、基本的にレストが出来ないストレニ系。
核心は4クリップ目付近。ホールドはどれも良くないながらも色々あるので、ムーヴはいくつか考えられそう。しかし、2便出して色々と試すも、糸口が見出せず。
ツアーの高揚感からか、移動の疲れも感じず、初日からヘッデン帰り。関東はこの時期、まだ日が短いが、沖縄は割と遅くまで明るい。
宿でPMAのムーヴ研究をして就寝。
Day 2
宿を7時頃に出発し、岩場には8時頃到着。このメンバーはとにかくたくさん登る。みんな強くなる訳だ。笑
- ✅あわのぼり(5.9) mOS
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まずはアンダギー岩の低グレードでアップ。気持ちの良いガバ続き。終了点からの景色も最高。
- ✅PMA(5.13a/b) 2d8go
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昨日に引き続きPMA。昨日の2便に続き、アップ後に1便出すも、どうしても4P目付近の核心が出来ない。
次の便で出来なかったら諦めようと思っていた計4便目、ようやく止まった!結局選んだムーブは、左手サイドカチ、右手ミニ縦ピンチからの右手ガストンデッド。
このガストンデッドがルート中で一番難しいムーヴだが、そこから数手先の「砂時計ホールド」取りもかなり強度が高い。
5便目で早速下から繋げてガストンデッドが止まった!しかし砂時計取りでフォール。やはり構成的にはここが最大の核心。6, 7便目も同じく砂時計取り落ち。これはまずい…。
計8便目(この日の6便目)、明らかに疲れてはいたが、気合いで砂時計を止める!ここから終了点前最後の6P目までは11前半くらいの強度。バラせば何でもなかったパートだが、ここも落ちられる。叫びながら突破して6P目にクリップ。
最後は5.9くらいの完全なビクトリーロード。気分は最高だった。今回のツアーのハイライト。諦めなくて良かった。
- ❌タコライスチーズ(5.12b/c) 1d1go
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ツアー最大の目標PMAを登り、ここから気分的にはエクストラステージ。ただ完全エンクラにはまだ少し早い。ということで、この岩場では貴重な12中盤の「タコライスチーズ」をチョイス。
前半はそれほど難しくない。滑りそうでちょっと怖いヒールフックで大穴を取ってロングレスト。手は文句なしのガバだが、スタンスが悪くて完全回復は難しい。
上部核心は右手で甘いカチを取りにいくリーチーな引き付け。さらにそこから左手を寄せてくるマッチも悪い。なんだか有笠山の「ルンルンしんすけ」を思い出す構成。
次の便で出来そうだったけど、さすがに疲れていたので、RPは翌日に取っておくことに。
この日も当たり前のようにヘッデン帰り。ツアー最大目標のPMAを登ることができ、心地の良い眠りについた。
Day 3
Day1,2と連日のヘッデン帰りだったが、不思議とそれほど疲れはなし。この日も朝から岩場に向かう。
- ✅ハブバリ(5.10b) FL
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まずはアンダギー岩の簡単なルートでアップ。海を眺めながら体をほぐす。
- ✅タコライスチーズ(5.12b/c) 2d2go
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前日にムーヴは完成済み。繋げるとちょっと危なかったけど、この日の1便目でしっかり決めることが出来た。
難易度はリーチによって大きく変わりそう。背の高い人は「うるま(5.12a/b)」よりも登りやすく感じるかも。
- ✅ガーリックチキン(5.13a) 1d4go
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すでに成果としては十分。しかしツアーはようやく半分を過ぎたところ。思ったほど疲れもないので、欲張って今ツアー2本目の5.13を狙う。
「ガーリックチキン」はこの岩場では珍しいコルネを使ったトラバースからスタート。フットホールドが細かく、高度感もあってめっちゃ怖い。
PMA(5.13a)のような強烈な核心はない分、小悪いホールドが長く続く感じ。下部の「ブエノチキン(5.11b)」終了点で完全レストできることもあり、グレード感はともかく、メインウォールの一番高くまで登れるルート。ムーヴもあるし、終了点からは遠くまで海が見渡せて爽快感抜群。
- ✅初日の出(5.11a) mOS
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この日のデザートに、アンダギー岩の5.11にオンサイトトライ。
初日の出は序盤に核心がある。実質は数手だけど、このグレードとしてはかなり強度がある。3回くらい地面までクライムダウンしたけど、なんとかmOS。
さすがにこの日は明るい内に撤収。連日満足のいく登りが出来ていて、晩ご飯が美味しい。
Day 4
ツアー最終日。疲れが一気に出たのか、朝起きた時から体が重い。
加えてこの日は風もなく、気温もうなぎ登り!明らかに高グレードにトライできる感じではない。いよいよ5.11無双を実行する時がやって来た。
ロケーション抜群の岩場なので、みんなの写真もたくさん撮った。
- ✅ハブハブトラップ(5.10c) FL
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最終日も気持ちの良いアップから。この記事を書いているのはツアーから半年後なので、特にアップルートの細かい内容は覚えていない。笑
- ✅アンダギーマン(5.11a) mOS
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前日登った初日の出と同じグレードだが、ルート内容は対照的で、こちらは持久系。3~4P目まで行った後、1P目までクライムダウンしたり、粘った末にmOS。
- ✅シークワサー(5.11b) FL
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こちらは初日の出(5.11b)と似ていて、序盤核心だったと思う。かいてぃーのムーヴをしっかり見てフラッシュ。
- ✅マンモスクイナ(5.11c/d) mOS
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このツアーで密かに目標としていた、マンモスクイナのオンサイト。ツアーの締めに、いざ尋常にトライ。
序盤のマントル返しが最初の核心。
完全レストを挟み、後半は薄被りでストレニュアスな構成。手が痛くなるほど細かくて鋭いカチが続いていて、最後まで落ちられる。
かなりギリギリだったけど、会心のトライでmOS。ツアーの締め括りにふさわしい登りが出来た。
14時頃、岩場を後に。やり切った。
総括
3泊4日で12RP、宿題なし。
普段行っている岩場とはグレーディングも少し違うのだろうし、得意そうなルートを選んで登ったということもあるとは思うけど、これは明らかに出来過ぎだ。
短期ツアーで13が2本登れたことはもちろん、5.11以下で一度も落ちなかったという点でもかなり頑張ったと思う。
ロケーション抜群の岩場で登りまくりの撮りまくり。大充実の4日間だった。一緒に登ってくれた仲間に心から感謝。
本格的にクライミングを始めてから3年くらい経ち、少しは実力がついてきたのかもしれない(相変わらずジムでは大して登れないけどw)。
4日間天気にも恵まれ、忘れられないツアーになった。ただし、まだ5.12dだけでも4,5本残っている。ツアーでRPが狙える実力がつく日が来るかはわからないけど、トミー・コードウェル初登の”Habu Saki(5.13d)”や、2つの既存ルートの間をオリジナルパートで繋いだ”Chris Garlic Chicken(5.13c/d)”などの高難度ルートも。
新エリアの”Aquarium Wall”も今回は時間不足で登れなかった。ぜひまた訪れたい。