海外ツアー

2026GWスペインクライミングツアー:ロデジャー編

きい

この記事は、2026年GWに行った、スペインクライミングツアーについて書いたものです(全5回のシリーズ)。

Day1:出国

2026年4月23日(木)、いよいよ出発の日がやってきた。

この1年、今回のツアーのために頑張ってきた、というと明らかに大げさだが(笑)、ずっと頭の片隅にはあった。

ロデジャーで結果を出すため、というかNo Limitを登るため、強傾斜トレーニングを意識してやってきた。ジムでは苦手なルーフに時間を費やし、体幹を鍛えるためにプランクもはじめた。早々にスキーシーズンを切り上げ、二子山の弓状や、有笠山のジ・アーチに通って調整した。

出発直前の週末には、ジ・アーチの天然記念物をRPし、ツアーに向けて弾みをつけることができた。調子は上々。

しかし、トレーニングに気合が入り過ぎたのか、右手首を少し痛めてしまう。リードの強度だとほぼ問題なさそうだが、滅多に故障しないタイプなので、ツアーに向けて若干の不安要素。

今回も会社の元々のGW休暇に加えて、有休を3日ほどくっつけた。直前はややバタバタしたが、不在中の仕事の引継ぎも無事終え、出発当日は午後半休で羽田へ。

いつも通りAir Chinaカウンターの長い列
搭乗までの間にラウンジで軽食
いよいよ出発!

乗継地の北京に到着。ただの乗り継ぎなのに、飛行機を下りてから謎の手荷物検査があり、相変わらず時間がかかる。

機内食を食べたばかりだが、深夜の北京空港のラウンジでまた食べる

搭乗口で、1本後の便で羽田からやってきた、チカコさん・ハナダテ姉妹の女子ズ3人と合流。一足先にスペイン入りして観光中のニキ(モトハシさん)と、パリから直接バルセロナへ飛ぶユーマさんとは、現地で合流予定だ。

Air Chinaのシートモニターはクソなので、バルセロナに向かう機内では、事前にタブレットにダウンロードしておいた、アマプラやNetflixの動画で時間を潰す。Netflixは3月のWBC観るためだけに加入したつもりだったんだけど、VIVANT観始めたら楽しくなって、結局その後も継続してしまった。笑

あとは去年撮影しておいた、自分のNo Limitの動画を観まくってから就寝。

Day2:バルセロナからロデジャーへ

フライトが30分ほど遅れたが、現地時間の午前9時前、バルセロナ空港に到着。飛行機内でもフツーに寝られるタイプなので、移動の疲れはなし。

ただ、入国審査の列がなかなか進まない。列の先頭付近を見ると、去年まではなかった、自動電子ゲートらしきものが並んでいる。これがエラー出まくりで、かえって時間がかかっているようだ。笑

ようやく入国審査を終え、無事に荷物も受け取り、先に空港に到着していたユーマさん・ニキと合流。ユーマさんとは、実に3年ぶりの再会だ。

お待たせしました

空港のレンタカー会社(Record Go)のカウンターで、予約しておいた車の受付を行う。しかし、ここで早速トラブルが。

レンタカーは2台予約していたのだが、Record Goのスタッフによると、なんと1台しか予約が見つからないという。予約はRentalcars.comで行ったので、その運営元である、Booking.comに電話で問い合わせ。

Booking.comからは、2台のうち1台の予約が、我々自身によって数日前にキャンセルされているという信じられない回答が。

仕方ないので、もう1台はその場でRecord Goの空いている車を、新たに申し込んだ。Rentalcars.comで謎のキャンセルになった1台は、後日返金されたけど、その場で申し込んだレンタカー代は思った以上に高かった…。

飛行機のチケットもそうだが、旅行代理店を通さず直接予約した方が、こうしたトラブルのリスクは少ない。しかし、大体の場合は旅行代理店から予約した方が安いので悩ましい。

トラブルだらけの前回ツアーに続き、今回も同じ流れなのか…。とりあえず、車が足りないという最悪の事態は避けられたので、気を取り直してロデジャーに向けて出発。

スペインで運転するのも、これで3年連続。左ハンドル・右側通行にも慣れてきたが、去年は仲間が運転していたもう1台が、高速でパンクするというトラブルもあったので、嫌でも慎重になる。笑

途中、ジェイダ(Leida)のメルカドーナで買い出し
クライミング道具と食料で、車は極限状態w

昨年の同じ時期は、1ユーロ=¥165くらいで、それでも記録的円安と言われていた。今回のツアー中は、1ユーロ=¥185くらい。円弱過ぎ…

パリ在住のユーマさんによると、今回寄ったスーパー(たぶんスペインでは標準的な価格帯)は、パリの相場に比べると半額くらいだそうだ。それでもこのレートだと、品物の種類にもよるが、さすがに日本のスーパーよりも高かったと思う。

銀行員のマイティ―によると、為替の介入が入る米ドルに比べ、ユーロは本当の日本円の価値をより表しているらしい。もはや日本は貧しい国と言わざるを得ない…。

円安はさておき、無事ロデジャーに到着。宿は事前のオンラインクレジットカード決済がなぜか通らず、公式サイトではなくイレギュラーなメール予約でやや不安だったが、こちらはちゃんと予約できていて一安心。笑

Valle de Rodellar Apartahotel

女子ズ3人は今回がはじめてのロデジャーなので、とりあえず荷物と食料を部屋に入れ、19時頃から空身で岩場の下見へ。

1年ぶりのロデジャー渓谷

しばらく前からの関心事だった岩の状態は、まったく問題なし。去年の同じ時期は、かなり染み出しが多かったが、昨シーズンは特別悪かったようだ。

渡渉チェック

川の水の量も、昨年に比べると全然少ない。前回ツアーでは、毎回渡渉で靴を脱ぐのが地味にストレスだったが、今回は楽勝だ。

ロデジャーは当日の雨には強いが、染み出しは晴れが続いても、なかなか収まらないということを、前回ツアーの経験から知っていた。良いコンディションで登れることがわかって一安心。

Day3:1年ぶりのNo Limit

いよいよ今日から、ロデジャーでのクライミング。今回は6人パーティーなので、最大2人×3組に分かれて、それぞれが登りたいセクターに行く計画。

僕は正直、No Limitのことしか頭になくて、それを察したゆきりんが、初日からスルヘンシア(La Surgencia)に付き合ってくれることに。感謝。

とりあえず、朝はみんなでエルカミノ(EL camino)でアップ。みんな日本人なので、移動翌日にも関わらず、出発は朝9時過ぎと早め(このあと段々遅くなっていきます笑)。

午前中は日陰になるエルカミノ
Q
✅Good TXINGU Good(6b+), FL

間違いチョークもあってわかりづらい。結構細かくて悪いの持たされるところもある。上部が核心。グレードは辛めで、デシマルだと5.11bくらいに感じた。

アップを終えて、いよいよスルヘンシアへ。1年ぶりのNo Limitとの対面だ。

スルヘンシア

去年はこの圧倒的な傾斜と長さを誇る壁を前に、怖気づいてしまった感もあるが、前回の経験を基に準備してきた今回は違う。

Q
❌No Limit(7c+), 4go(計4d14go)

今回もヌンチャク(ところどころ長スリング)は掛かっていたが、去年のものとは変わっていた。誰がどのタイミングで掛け替えてるんだろう?ありがたく使わせてもらう。

ツアーの少し前から、昨年の自分の動画を見返してはいたが、細かいホールディングなどはさすがに忘れている。1便目はテンテンで思い出し便。1つ1つのムーヴは、昨年よりも楽に感じる。やはり調子は良さそうだ。

日本とは違い、スペインのルートはYouTubeで探しても、それほど完登動画は出てこないのだが、人気のNo Limitは何本かあった。みんな複数箇所でニーバーしてるけど、やってみるとめちゃくちゃ難しい。ヨーロッパではニーバーの出番が多いためか、現地のクライマーはとにかくニーバーが上手い。僕も決して苦手意識はない(日本人の中では上手い部類だと思っている)のだが、日本との環境による差は否定できないと思う。

去年は計10便出し、1度しか突破できなかった第三核心。この日の2便目、まだやや迷いながらではあったが、早速第三核心を突破!しかし、その後のニーバーが決まらず、ヒールフックで休むも前腕爆発寸前。無限レスト手前の右手ガバカチが引けずにフォール。痛いくらいパンプしてしまい、地面まで下りたあと、そのまま気絶するように寝てしまった。笑

3便目はなぜか序盤から腕が張ってしまい、再び第三核心は突破したものの、クリップが出来ずにフォール。

4便目はヨレてもうダメかもと思ったけど、下部からかなり順調。第二核心前のニーバーがしっかり決まった。第三核心後のニーバーも決まり、2便目より明らかに余裕がある。それなのに、なぜか無意識にアドリブムーヴを出してしまってフォール。これはもったいなかった…。

とはいえ、やはり繋げると第三核心後から無限レストまでの間がキツイ。去年、はじめて第三核心を突破するまでは、第三核心を抜けた便で登れると思っていた。さらに今回も、再び第三核心を抜けたら、今度は落ちないだろうと思ったいた。バラせばなんでもないのだが、ここは明らかにLinking Crux(第四核心?)だ。

改めてNo Limitでは、「どんなにヨレていてもこのホールドなら引ける」といった、日本での経験が通用しないことを突き付けられた

しかし、去年は一度しか繋げて出来なかった第三核心で、今日は一回も落ちなかった。今ツアーのDay1としては悪くなく、気持ちはポジティブだ。

No Limit

午後からゆっくりやって来たクライマーは、派生ルートのNo Limit Fanatic(8a)をあっさりRP。登るペースが一定で乱れがなく、とても落ち着いたクライミングだった。こういう強傾斜ロングルートのお手本を見せられた気分。

この日の主役はさやてぃー。Aquest Any Si(7b+)を、あっさりワンデーしてしまった。さやてぃーもこのツアーのため、一緒に弓状に通ったり、トレーニングは万全で調子が良さそうだ。

ひとりご機嫌のさやてぃー

一方、パートナーの問題もあり、ずっとボルダーばかりだったユーマさんは、リード自体が久しぶり。持久系のAquest Any Si(7b+)はテンテンだったそうで、珍しくションボリしていた。笑

Day4:リグロスでアクティブレスト

今年で3年連続のスペインだが、ロデジャーをメインにしつつ、毎回新しい岩場にも行ってみたいと思っていた。

今回選んだのは、リグロス(Riglos)というマルチピッチの岩場。

ロデジャーは雨でも登れるセクターが多いが、リグロスはマルチということもあり、天気が良い日に行こうと計画していた。

週間予報を見ると、それなりに雨マークがあるが、今日は問題なく晴れそうだ。頭はNo Limitで一杯ではあったのだが、スルヘンシアで連登するより、簡単なマルチでのアクティブレスト翌日の方がチャンスがあるだろう。

リグロスでのクライミングの様子は、別記事にまとめています。

あわせて読みたい
2026GWスペインクライミングツアー:リグロス編
2026GWスペインクライミングツアー:リグロス編

Day5:ついに限界突破

昨日のマルチで水が足りなかったせいか、朝起きた時にのどが痛く、体もだるい。風邪もめったに引かない人間なので、たまに体調不良があると戸惑ってしまう。No Limit完登に向けて、思わぬハードルが出来てしまった。

今日は宿で休もうかと迷ったが、とりあえずエルカミノで登ってみて、様子を見ることにした。

もはや定番ムーヴのエルカミノアップ
Q
✅LA TENDA(6c), mOS

エリアの右端付近にあるルート。出だしからパワーを使い、中間部でも結構悪いカチを持たされる。

上部は基本ガバだが、ライン取りが難しい。僕は左の方にチョーク跡を追いかけていってしまい、右トラバースでまた戻ってきた。下部でかなりパンプしてしまったが、ロングレストでなんとか戻した。

終了点を除き、確か9クリップ。思いのほか長さがある。デシマルだと、体感5.11cくらい。仲間はこのルート付近の他のラインも登っていたが、エルカミノの右端付近は、辛めのグレーディングのルートが多いようだ。

登ってみると、幸い体調は徐々に良くなった。満を持して、スルヘンシアに移動。

Q
✅No Limit(7c+), 2go(計5d16go)

1便目から狙うが、序盤から流れが悪く、早々にパンプしてしまったので一度テンション。ムーヴ探りに切り替えたが、結果的にはこれが良かった。

いくつか細かい部分でムーヴを修正。一番大きかったのは、先日最高高度を出した時にフォールした、無限レスト前の一手。これまでガバカチを引くムーヴだったのだが、繋げるとまた落ちるかもと思ったので、ガバでの距離出しに変更。

そこから終了点までのムーヴも再度確認。無限に休めるので、おそらく落ちないとは思うのだが、やはり終了点のクリップを含め、最後の数手が悪い。

2便目。なんだか体が軽く感じて、登れそうな気がする。先ほどムーヴを変えたところが上手くはまり、下部からこれまでで一番順調。第三核心は、もはや核心に感じない。しっかり休んでから第四核心(Linking Crux)へ。

こちらも前の便で変えた、無限レスト前の一手。ここまでほぼ完ぺきだったが、それでもギリギリだった。叫びながらなんとか突破。ついにここまで来た。ようやくパンプ地獄から解放される。

そこからは、色々なところで念入りに休みつつ、徐々に高度を上げる。No Limitはやはり恐ろしく、第四核心までのパンプは、腕を振っても振っても完全には戻らなかったが、それでも上部は問題なかった。

終了点へのクリップ後に涙が出たのは、たぶん初めてだと思う。本当に嬉しかった。

今回のツアーに出発する前、周りのクライマーは「宿題のNo Limitをサクッと片付けて、他のルートを楽しめるといいね」と言ってくれた。しかし、僕は正直なところ、No Limitが自分にとって、それほど簡単ではないと思っていたし、今回も他のルートが登れなくても、No Limitさえ登れればいいと思っていた。それだけ、このルートに対する思いは強かった(そんなに毎日仲間がスルヘンシアに付き合ってくれたのかはさておきw)。

日本では決して経験できないクライミング。慣れの問題もあるのだろうけど、僕には8aくらいに感じた。とにかく、自分にとって困難なルートを、それに向かって長い間努力して、登ることができた。グレードなんてどうでもいいか。

今回くらいはポエミングしても許される気がする。笑

岩のコンディションの違いなのか、去年と違って今年のロデジャーは、それなりの数のクライマーを見かけたが、この日のスルヘンシアは珍しく貸し切り。

Limit doesn’t exist! 一年越しの限界突破

長い間目標としてきたNo Limitともお別れかと思うと、なんだか下りるのがもったいなくて、しばらくロープにぶら下がっていた。

ゆきりんも2日前の宿題を無事回収

今回のメンバーで、唯一僕と同じく2年連続参加のニキは、自分ごとのように喜んでくれた。昨年一緒にロデジャーで登ったものの、今年は一緒に来られなかった仲間からも、お祝いのメッセージが届いた。本当に感謝。

ユーマさんとさやてぃーがピンス(Pince Sans Rire)で登っているとのことで、我々も合流することに。

去年までは渓谷内ではほとんど電波がなかったが、基地局が増えたのか、今回は結構スマホが使えた。他のセクターにいる仲間に連絡する時に便利。

セクターとしては、ロデジャーの中でピンスが一番のお気に入り。ただし、コルネが多いため、染み出しが多かった昨年は登ることができなかった。

No Limitが登れたら、あとは何でも良かったと書いたけど、プレッシャーから解放され、大好きなセクターで気楽に登るのは楽しかった。笑

Q
❌Gracias Fina(8a), 1go

僕はAkelarre(7c+)のつもりでトライしたんだけど、実はオンラインのPDFトポが間違っていて、地面まで下りた後、僕が登っていたのはGracias Fina(8a)だと現地のクライマーが教えてくれた。彼らが持っていた紙のトポを見せてもらうと、確かに分岐から右に行くのがGracias Finaで、Akelarreは左だ。どうりで難しいなと思ったw

ちなみにGracias Finaの内容は極上で、一応出来ないムーヴはないが、超持久系で繋がるイメージは全く持てず。日本にあったら間違いなく狙うのだが、僕がツアーで登るのは厳しそうだ。

残念ながら、「もう触ることはないかな」と、この時は思っていた。

みんなで夕飯

今回は2棟借りていて、女子部屋と男子部屋で分かれている。食事も基本別々だったが、この日は女子ズがカレーを作ってくれた。大感謝。

去年悔しい思いをして、長い間目標にしてきたNo Limitを登ることができ、最高の日になった。

Day6:計3エリアで遊ぶ

ユーマさんとゆきりんは、この日再びリグロスへ。毎回のエルカミノにも飽きてきたので、今日は他の4人で、同じく午前中日陰となる、エゴセントリスモ(Egocentrismo)からクライミングを開始。

エゴセントリスモでトポをチェックするニキ
Q
❌Egocentrismo(7c), 1go
ルートの取り付き

エリア名と同じ名前を持つルート。全体的に傾斜の強いエゴセントリスモの中でも、一際被った部分に引かれている。

積まれてある石の上からスタート(そうしないと実質無理ゲーと思われる)。よほど自信がない限りプリクリが無難。

最初のボトミングホールドを、右手で持つか、左手で持つか悩ましい。まともなスタンスはほぼ皆無。ファーストムーヴが解決できず、とりあえずスキップして上へ。

基本的にホールドはガバだが、強傾斜の中での距離出しが連続する。手で使うホールド以外のフットホールドが軒並み悪い。中間部手前のガバポケットはチッピングだろうか。

中間部から上はやらなかったが、恐らくそこまで難しくなさそう。

日本では経験のないルートで、これはこれで面白いが、出だしのワンムーヴが解決できず残念。ちなみに、繋げるのも簡単ではなさそうだった。

午後からは東面のグランボベダ(Gran Boveda)へ。

Gran Bovedaの巨大な壁
Q
✅Nanuk(7c), 4go(計4d10go)

こちらも前回ツアーの宿題。No Limitのように、どうしても回収したいという訳ではなかったのだが、Nanukもとても面白いルートで、せっかくボベダに来たので再チャレンジ。

正午過ぎにボベダに着いた時、すでに壁の大部分は日陰だったが、Nanukにはまだ陽が当たっていた。この日は結構気温が高く、日陰で登っていても暑いくらいだったので、陽射しの中で登ったら水がいくらあっても足りない。13時頃までのんびりして、日陰になるのを待ってからヌン掛け。

去年の自分の動画を見返してから取り付いたので、ムーヴはすぐに再現できた。リップへのランジも一発で止まったが、やはりマントルはそこだけやっても難しい。

2便目は中間部でスリップ落ち。すぐに3便目を出し、リップは止めたのだが、マントルの右手サイドアンダー取りでフォール。

4便目は上部のニーバーレストでほぼ全戻し。リップも余裕を持って止められたのだが、それでも右手サイドアンダー取りはギリギリだった。体感Soft 7c+くらい。

ちなみに、Nanukのマントルの右手サイドアンダーはかなり高い位置にあるため、ホールドの向きが悪い。これを止めた時、もともと痛めていた右手首に、ズキッという痛みが走り、悪化させてしまった。

それでも、悪化させてしまったホールドと同じような、ハイアンダーを持たない限りは痛くなかったが、以降はテーピングを巻いて登った。本当は予防的に、悪化する前に巻いておくべきだったんだろうな。笑

チカコさんとさやてぃーは、ピンスで登っているらしい。我々もまだ少し時間があったので、昨日に続き、この日3エリア目となるピンスへ。

Akelarreのワーキング
Q
❌Akelarre(7c+), 1go

先日はAkelarreのつもりが、間違ってGracias Fina(8a)を登ってしまっていたので、今度こそ分岐から左へ。分岐までは何本かのコルネの間を登る。下部はニーバーし放題だが、徐々にニーバーできなくなってきて、ライン取りも難しい。分岐まででそれなりに疲れる。

AkelarreとGracias Finaを間違えたのは、オンラインPDFトポの誤記のせいだが、地面から見上げると、Akelarreのラインの方が傾斜が強くて難しそうに見える。その分、Gracias Finaとは違い、ホールドは概ねガバ。ただし、サイドやアンダーが多く、それでいて足が悪い。

すでにRPしていたニキがビレイしてくれていたので、登りながらムーヴを教えてもらう。かなり好感触で、Gracias Finaと違い、こちらは十分狙えそうだ。

前日にNo Limitを登ったばかりだが、今日も成果があって良い一日。

ちなみに、1ルートだけでも長いリグロスで、ユーマさんとゆきりんはこの日、2ルートを継続登攀。スペインは日が長く、GWの時期は21時頃まで明るいのだが、下山はヘッデンだったそうだ。笑

Day7:Akelarre完登

気づけば今日で5連登目。6人もいるし、みんな好きな時に休めばいいのだが、なぜか誰も休まない。笑

ツアーの高揚感もあると思うが、ロデジャーは宿から岩場まで歩いて行けるので、車での移動時間がなく、休む時間がたっぷりとれる。指皮に優しいというのも連登向きだ。

しかし、この頃になると、みんなの行動はしっかりスペイン時間に。笑

お昼頃からのんびり岩場へ向かい、20時くらいまで登る。そうなると、いきなり東向きのエリアでも問題ないので、この日は直接ピンスへ。

Q
✅La Alimana de Ocana(6b), mOS

ムーヴが素直でアップ向きだが、やや悪いホールドもあって、6bとしては難しめ。それなりにパンプした。

Q
✅Akelarre(7c+), 3go(計2d4go)

前日の1便と合わせて2撃を狙うが、核心の左手天井ピンチからの一手が出せずにテンションコール。次の便も同じところでフォール。

手に足ハイヒールムーヴは、バラシだとできるんだけど、繋げると厳しい。ニキにアドバイスをもらい、普通に踏みにしたら、この日の3便目で核心を突破。終盤のガバの距離出しも、繋げると簡単じゃなかったけど、叫びながらRP。

核心前の悪いニーバーで休めるかどうかにもよるが、7c+としてはソフトめかなと思う。

ヌンチャクを使わせてくれた、現地の女性クライマー(我々の間ではニーバーネキと呼んでいたw)は、あらゆるところでニーバーしまくっていたが、それでも繋げると核心で落ちていた。

ちなみにニキ(モトハシさん)が先日RPした際は、下部も含めて一度もニーバーなし(本人いわく、やらないのではなく出来ないらしいw)。ニーバーネキを唖然とさせていた。笑

連日の成果で、心にゆとりが出てきたので、仲間の撮影も。

ユーマさんの登り
夜は決まってクライミング談義
料理できない僕は専らコーヒー担当w

Day8:今日もピンスへ

6連登目だが、不思議と疲れはない。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、ロデジャーでのクライミングも、今日を入れて残り2日。

ゆきりんがエリア名と同じ名前を持つ、Pince Sans Rire(7b+)にトライ中だったこともあり、この日もピンスへ。

ちなみにPince Sans Rireはスペイン語ではなく、フランス語とのこと。パリ在住で、フランス語が堪能なユーマさんによると、発音はあえて日本語で書くなら「パンソンリー」に近いらしい。ロデジャーはフランスとの国境に近いこともあり、フランス人クライマーの姿もかなり多い。

La Pitonという人気の7cも気になったが、ルーフに近い圧倒的な傾斜で、恐らくNot my style。

先日の感触からすると、あと2日ではかなり厳しいが、すでに成果は十分だから楽しめれば良いかなと思い、Gracias Finaをやることにした。

Gracias Finaのワーキング中
Q
❌Gracias Fina(8a), 4go(計2d5go)

先日、Akelarreと間違って触った時は途中で下りたので、とりあえず上まで抜けてみる。核心最後のガバアンダー止めた後も、次のピンのニーバーレストまで、十分落ちられる。そして終了点までのランナウトがめちゃくちゃ怖い

この日のGracias Finaは、僕を入れて3人がトライ。フランス人のたぶん10代の若者が、Akelarreとの分岐後のレストで、「左足だけでなく右足でもニーバーできるよ」と教えてくれた。そうなると、左足が疲れてきたら右足、また左足といった具合にかなり休める。これは大きい。

恐らくGracias Finaの最大核心は、ガバアンダー手前で、左手ポケットから横方向に遠い右手ピンチを取るところだろう。この日は計4便出したが、その最大核心にすら到達できなかった

セッションしていた内の一人、これまたフランスから来たピンク色の髪のにーちゃんは、ここ数日でAquest Any Siをはじめとする数本の7b+を、軒並みオンサイトした強者。Gracias Finaは先日からトライしていたようだが、最大核心で落ちていた。

若者の方は、結構打ち込んでムーヴが完成している感じで、最大核心後のガバアンダーまでいったものの、その後にヨレ落ち。

これは相当難しそうだ…。

この日はさやてぃーの誕生日ということで、みんなでレストランに食べに行った。

泊まっていた宿のレストラン
パエリアは間違いない
手前のソースがかかったポテトもめちゃ美味い

Day9:ドラマのような最終日

7連登目。ついに誰もレストしないまま、ロデジャー最終日を迎えてしまった。笑

朝起きると、地面がしっかり濡れている。寝ている間にかなり雨が降ったようだ。ユーマさんがドローンを飛ばし、みんながやっているルートはそれぞれ無事なことを確認してくれた。

この日からスペインの連休だったそうで、岩場にはかなり人が多かった。とはいっても、日本に比べるとエンジョイ層が多いので、我々がやっていたルートは混雑とはほぼ無縁。

ロデジャーには乗馬のアクティビティもあったらしい

冷静に考えて、Gracias FinaのRPはかなり厳しい。「せめてあと3日くらいあったら可能性あるんだけどな~」とか言いつつ、せっかくムーヴは作ったので、最終日もピンスへ。

Q
✅Gracias Fina(8a), 4go(計3d9go)

昨日、フランスの若者がヌンチャク回収したので、1便目はヌン掛け。

2便目から狙ってみる。7連登とは思えないほど下部から順調で、昨日の最高高度を更新し、そしてなんと最大核心(とこの時は思っていた)の右手ピンチがいきなり止まった!

しかし、そのあとの左手細コルネ取りでフォール。3便目も同じ。実はこの左手細コルネ取りが最大核心だった。もう探っている時間も体力もないが、ポンプアップで登り返し、他に良いムーヴがないか確認。

体を横に向けて右ピンチを効かせる意識をするとやや楽だが、基本的には気合いで握るしかなさそうだ。

この日が最終日なので、みんなで岩場で集合写真を撮ろうということで、他のメンバーが登っているAquest Any Siまで、レストも兼ねて一度下りる。

またピンスまでの急登を歩いてから4便目。時間的にはもう1便出せなくもないが、体力的には実質これがラストだろう。

しかし、当たり前といえば当たり前だが、下部からヨレを感じる。さっきのトライの方がよほど良かった。右手ピンチ取りでもう落ちるかと思ったけど、なんとか止める。そして気づいたら、なんと左手に細コルネが収まっている!

自分が一番ビックリ。続いて叫びながらガバアンダーをキャッチ。クリップしてシェイクを入れるも、死ぬほどヨレている。これは昨日のフランスの若者と同じく、この先で落ちるなーと思いつつ再発進。

絶対に足が切れちゃいけないところで足が切れる。だけど、またなぜか落ちてなかった。超ギリギリでニーバーレストまで到達。ここで結構戻すことができて、最後のランナウトパートは問題なくこなすことができた。

なぜ登れたのかまったく不明。No Limitよりやや難しくて、しっかり8aあると思う。ちなみに紙のトポだと、Akelarre(7c+)に対してGracias Finaは7c+/8a(どこにスラッシュ入れとんねん!という感じだが、なぜか紙のトポにはこのグレードが多い)だが、とても0.5グレード差とは思えず、Gracias Finaの方が1.5グレードくらい難しく感じた。

ロデジャーには、死ぬまでに登りたい5本の8aというのがあって、Gracias Finaはその内の1本。実際に登った感想として、大いに納得の素晴らしいルートだった。

また、後になってしゅんたろーさんがDMで教えてくれたのだが、Finaというのはロデジャーにあるキャンプ場のオーナーの女性らしい(ちなみに我々が泊まったValle de Rodellarは、そのFinaの娘さんが支配人とのこと)。

ルート名の由来の詳細は分からないが、深い思い入れが感じられる。そんな特別なルートを最終日に登ることができ、とても感慨深い気持ちになった。

ちなみにこの日は、メンバー全員に大きな成果があった

同じくピンスで登っていた、昨日が誕生日だったさやてぃーは、Maria Ponte El Arnes(7b+)をRP。

姉のゆきりんは、ツアー中盤から打ち込んでいた、Pince Sans Rire(7b+)を完登!このツアーに照準を合わせ、早々にスキーシーズンを切り上げた僕と違い、直前まで滑っていたのにすごい。

ユーマさんが巧みな操縦技術で、ドローンの羽が壁に触れるギリギリまで寄せ、攻めの姿勢で撮った1枚を載せておきます。笑

Pince Sans Rireを登るゆきりん(ユーマさん撮影)

ニキはPALOMERAというセクターにある8aを朝一でRP。ちなみにニキは、このツアー中に主なところで、8aをもう1本、他にも2本の7c+を登っている。これを7台中盤のオンサイトを楽しみつつやってしまうのだから、すごいとしか言いようがない。

他のメンバーはまだAquest Any Siで登っているということで、ピンスから移動して合流。

スペインでは岩場にも犬を連れて来ている人が多い
登れたのにドンマイ?笑

続いてチカコさんが、Aquest Any Si(7b+)をオンサイト!ニキも強いが、チカコさんも本当に強い。

日本組と違い、スペイン後もさらに1ヵ月ほどのロックトリップの予定があるユーマさんは、ヒジの痛みもあり、この日はレストの予定だった。しかし、みんなのアツい登りを見て(単に唆されて?笑)、宿題だったAquest Any Si(7b+)に再チャレンジすることに。

流れで登ることになってしまったユーマさんw

ユーマさんのトライまでの間、ハナダテ姉妹と僕はロデジャー観光。

今回僕には、No Limitの他に、もう一つ回収しなければならない宿題があった。

前回のツアーで、Delfinのアーチをドローンで通り抜けようとして、まさかの墜落。今回のツアーでは、2号機を持って来ている。前回の墜落では、Aquest Any Siから飛ばし、電波をロストしてしまった。今回はまず、ちゃんとDelfinまで歩いて上がる。笑

Delfinにて撮影(このあと無事にアーチを通過w)

そして念願のミッションコンプリートw。

ちなみにEl Delfin(7c+)にはフィックス・ロープが張られていて、理由はわからないが、この日は登れないようだった

そのあと、最後にもう一度スルヘンシアの壁を見に行った。No Limitを登ったのが、なんだかもう随分前のことのようだ。

スルヘンシアの壁をバックに

再びエニシに戻り、ユーマさんのAquest Any Si(7b+)トライを見守る。初日はテンテンだったそうだが、ツアー中に徐々にリードの勘と持久力を取り戻したようで、無事RP!

なんという日だろうか。ロデジャー最終日、しかもみんな7連登目なのに、全員に成果が。

しかし、まだ終わっていなかった。時刻は19時半過ぎ。「いやー、最高でしたね!じゃあ宿に戻りますか!」と言うと、チカコさんから、「あ、私のヌンチャクが宿題のルートにまだ掛かってるだよね」という言葉が。

それは、すでにニキはRPしたものの、「どう考えても8a以上ある」と言っていたルートだ。さすがに最終日の、さらには6人全員にとっての最終トライで、そんな高難度が登れてしまったら、さすがに出来すぎだろう。

しかし、本当に強いクライマーというのは、こういう時に力を発揮するらしい。一手一手ギリギリに見えたが、声を出しながら高度を伸ばしていくチカコさん。そして本当に登ってしまった…。

その場にいた他のクライマーも、拍手で祝ってくれた。

僕自身のGracias Fina完登も、明らかに実力以上の不思議な力が出たトライだった。

これからも続くであろう、クライミング人生の中で、ずっと忘れられない日になった。

ロデジャーのシンボル、Delfinアーチをバックに、Aquest Any Siにて

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ABOUT ME
きい
きい
登ったり滑ったりする人
1988年生まれ、愛媛県出身
東京の北西部に住み、週末は専らさらに北や西に出かける
仕事は電機メーカーのエンジニア
クライミング:2021年からリード&外岩を始めて本格的に
スキー:2017年からバックカントリーにハマる
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